第40章


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「へへ、なるほどなぁ。リニアが止まっていることを逆に利用するってか。嫌いじゃねえぜ、そういうの」
 ニヤリとデルビルはほくそ笑んだ。不法侵入、人間にとって犯罪であろう行為にまったく躊躇の無い反応からして、
真っ当に生きてきた人間ではあるまい。こいつの正体をより一層確信する。が、今はその過去を存分に利用させてもらおう。
「発電所のトラブルはいつまで続きそうな気がする? あくまで予想でいい。お前は感が良さそうだからな」
「そうだな、大事なパーツを盗まれたらしいから、犯人が見つかって隠し場所が分かるまでどうしようもねえだろ。
あの辺の管轄の警察は結構無能らしくてな。昔、ハナダで泥棒に入っ、入られた家のすぐ裏に犯人が隠れていても、
変なガキの邪魔が入るまでは見つからなかったって聞いたことがある。犯人が自首でもしねえ限り、
どんなに早くても一週間以上は見つからねえよ」
 ――途中、休み休み歩いたとしても送電再開まで十分な猶予がありそうだな。
「見込んだ通り、良い見立てだ。では駅と線路の警備や管理体制はどうなっていると思う?」
「ああ、前に忍び込んだことがあるイタズラ好きな友人がいたが、ザルもいいとこだったらしいぜ。
止まっちまって誰も利用しない今、夜なんてがらがらだろうさ。原因が発電所にあるって分かりきっている以上、
整備の連中もすることが無くて暇こいてるだろうぜ。送電が解決しだいすぐにでも運転を再開したいだろうから、
内部を厳重に閉鎖してるなんてこともないだろう。もしあっても破ろうと思えば破れる程度のものだろうさ」
煽てにまんまとのり、べらべらと得意げにデルビルは喋りだす。
「ふむ。どうやら船足はもう必要なさそうだな。まさか人間に近年掘られて出来た人工の地下トンネルに伝説の何やらが
住み着いているなどあるまい。ストライクの件は引き続きお前の方でよろしく取り計らってもらおうか、ペルシアン」
 ちぇっ、とペルシアンが諦めるように舌打ちするのが聞こえた。ミミロップ達にも特に異論は無さそうだ。
「決行は夜。ヤマブキの駅から線路内へと忍び込み、地下からジョウトを目指す。
空、海、陸は十分に経験している。今度は地下を味わってみるのも中々におつな物ではないか」

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