第41章


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「おっと、みんな一旦ストップだ」
 ダクト内をしばらく進んでいると、先行くマフラー野郎が不意に立ち止まり、あっしらを押し止めた。何事かと思い、
あっしはニャルマーの横から割り込む。
「ちょっと! あんまりくっつくんじゃないよ!」
「うるせえ、せめぇんだから仕方ねえだろうが!」
 嫌そうに文句を垂れるニャルマーに、あっしは言い返す。ダクトの中は狭く、人間だったらまるで
犬みてえに四つん這いになってやっと潜り進めるぐらいの大きさしかない。人間よりずっと小さな
あっしらは這いつくばるまでもないが、横並びになるにはちときついものがある。
「はいはい、非常時なんだから喧嘩しない。例のセンサーってのはあれのことかな」
 マフラー野郎が指し示した方を目で追うと、穴の無い黒塗りされたコンセントボックスみてえな
小さな機械がダクトの壁面両側に取り付けられているのが確認できた。
「ああ、そうだ。団員共の話によりゃ、あの真っ黒い機械の間には普通の目じゃ見えない光線が流れてるらしい。
それに何かが触れたら知らせる仕組みなんだとよ」
 あんなもん、この暗がりでよくもまあ目ざとく見つけたもんだ。だが、今更もうこの程度では驚きもしなかった。
過去の訓練や経験で危ねえもんは存分に頭と体に叩き込まれ、骨身にまで染み付いてやがるんだろう。
「ふうん、よくあるタイプだね。さて、出来れば引っ掛からないに越したことはないけれど、
下手に壊したりしたら異変に気付かれるかもしれないし、どうするかなぁ……」
 言いながら、マフラー野郎はセンサー装置の取り付けられている高さを手で測り、あっしらと見比べだす。
その様子からして、あいつの思いついた事はあっしにも大体想像がついた。
「うん、君達もぎりぎりいけそうだ。センサーはあの一セットしか無いみたいだし、どうにか下を這い潜ってみようか」
 子どもに簡単な課題を出すような調子でマフラー野郎は言った。
「へいへい、了解だ」
 あっしはすんなりと受け入れる。どうせこいつに反論したところで、大丈夫だとか心配ないとか返ってくるだけで、
無駄だって事はもう理解していた。こいつの言うことを聞いていれば、苦労はしても大体どうにかなるであろうことも。


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