第41章


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「ぐ、ぐ……」
 地で呻きながらヘルガーは俺達を睨み上げる。自慢だった群青の毛並みは、電流にあてられ無様に煤けていた。
 マフラー野郎はヘルガーの顔面を片手でがしりと掴む。
「動くな。先ほどの電気は少しは加減したつもりだ。幾つか質問に答えてから、このまま大人しく俺達を見逃せ。命までは奪わない」
 空いた方の手で電流を弾けさせて見せ付け、マフラー野郎は言い放つ。
押さえつけられながら、ヘルガーはぐるぐると怒りに満ちた唸り声を上げていた。
「一つ、あのコリンクはどこに運ばれた?」
「……サンドが連れて行ったのを見ただろう。もうこのアジトにはいない。今頃はトラックの中で揺られている」
「トラックの行き先は?」
「キキョウシティに買い主がいると、主人は話していた」
「行き先が分かったなら、早く助けに行こうじゃないか!」
 焦った様子で、ニャルマーは言った。
「うん、そうだね。俺がこいつをおさえている内に、君達はチビ助も連れて一足先に通気ダクトの中に潜って行ってくれないか
俺はもう少し聞きたいことがあるから少し遅れるかもしれないけど、必ず追いつくよ」
 言いながら、マフラー野郎は片手でマフラーを緩め、チビをそっと降ろした。チビは殊更不機嫌そうにムスッとしたが、
マフラー野郎に宥められ、仕方なさそうに頷いた。
「分かったよ。この中じゃ、アンタが一番頼りなんだ。すぐに来てくれないと困るよ」
 ニャルマーはピチューをひょいとくわえて背に乗せると、檻の上によじ登って通気ダクトまで辿り着き、格子を外して中に入って行った
あっしもその後を追い、ダクトの入り口を潜った。しかし、あいつの聞きたいこととやらがあっしは妙に気になり、
陰から少し様子を窺ってみることにした。

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