第38章


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 そうこうしている間に、ニューラ達はあっというまに限界まで積み荷を乗せ、落ちないようしっかりと縛り上げている。
「終わったぜ、マニューラ!」
 ニューラの一匹が声をかける。
「よーし、引き上げだ!!」
 マニューラはロズレイドから手を離し、ソリの縄を一本拾い上げた。
「それじゃーな。あばよ、ロゼ!」
 そう肩越しに手を振ると、マニューラ達は行きとは比べ物にならないくらいのスピードでソリを引いて帰っていった。
 ――嵐のようだった……。
 終始圧倒され、ロズレイドはしばし茫然としてその場にぺたりと座り込んでいた。
ふう、と息を吐き、ロズレイドは草のマントに付いた砂埃を払いつつゆっくりと起き上がる。
 何だか感慨に浸る暇もなかったな。そんな風に思いながら、
ロズレイドは何となく道具袋を覗く。中にはニューラ達から貰った道具が沢山詰まっている。
 ――何だかんだで結構良い方達だった……かな。
 ふふ、と静かに笑って袋を閉じようとした時、貰った覚えのない缶が目にとまる。よく見ると、それは道中マニューラが飲んでいたサイコソーダの空き缶だった。ああ、勝手に入れたんだな。まあいいや、代わりに捨てておこう。
 水を差された気分になりながらロズレイドは空き缶を取り出す。
ふと、缶の底側を見ると、何か刻まれたような傷が付いていることに気が付く。
それは紛れもなくマニューラのサイン――

『いつか また 来い』

 ロズレイドは空き缶をゆっくりと大事そうに道具袋の奥へと押し込んだ。


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