第41章


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「あんなチビ助が泣きも喚きもしないでいるんだ、アンタもぎゃーすか喚いてないで腹を括るんだね、ヤミカラス」
 毛を逆立て姿勢を低く構えながらニャルマーが横目を向けて言った。
「チッ、うるせえな、何も知らねえガキのくせに偉そうに――」
「……もう隠してもしょうがないから忠告しておくよ、チンピラガラス。そのムサいツラをずたずたに
引っ掻かれたく無きゃ、アタシをガキ呼ばわりするのはやめときな――コリンクの前以外じゃね。
こんなナリをしちゃいるが、アンタとアタシの歳は然程差はないはずさね」
 ……再びの絶句。もう嘴は開いたままで、震える余力も無かった。

「いつまでも固まったまま何をごちゃごちゃと……もう抵抗を諦めて、誰から先に始末されるかの相談かね?
 ならば悩む必要はない。全員仲良く一思いに黒焦げにしてやろう」
 言って、ヘルガーは首をもたげ大きく息を吸い込み始めた。青い胸元が徐々に膨れながら、
煌々と赤い輝きを帯びていく。
「いい具合に、こちらを舐めてかかってくれている。いいかい。あいつが炎を吹いた瞬間に、
散開して各々の標的に一気に取り付くんだ。その後は、撃破までは望まない。俺がヘルガーの動きを止めるまで、
何とか持ちこたえていてくれ」
 声を潜め、真剣な面持ちでマフラー野郎は言った。
「了解だよ。あんたのその奇妙な自信に一つ賭けてみようじゃないか」
「だああ、もう、ちきしょう、やりゃいんだろ、やりゃ! どうせくたばるなら、一匹でも多く道連れにしてやらあ!」
 もう抱えるための頭が足りなすぎて、三つ首鳥のドードリオにでもなっちまいたい気分だった。

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