第41章


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「ああ。コンテナから助けた二匹の片方のニャルマーって……もしかしてこの洋館の近くでも時々見かけた、
ムクホーク達と連るんでる女性だったりするのか?」
 エンペルトの言葉に、ドンカラスはぴくりと眉を動かす。
「いつ奴を見かけやがった? まさか洋館に入れたりしてねえだろうな?」
「あ、ああ、言いつけられていた通り、いつも中に通すことはせずに、やんわりと帰ってもらってはいたが……」
 何気なく聞いたつもりが思わぬ剣幕で返され、エンペルトは少し困惑しながら答えた。
「それでいいんでさあ。奴の呼び込む厄介は冗談にならねえ。もし何か吹き込まれそうになっても、
取り合わずにすぐに追い払いなせえ。大きな群れの有力者に様々な手段で擦り寄っては内部に徐々に入り込み、
骨と皮になるまで食い潰すのを生業として生きてきた強かな奴だ。それこそ、ガキの頃からな」
「……まさか、そんなポケモンだなんて、少し話しただけじゃ思いもよらなかったけれど」
「それだけ奴の猫被りの演技と催眠術が巧みだってことでぇ。おめえさんの読み通り、あっしの言った青い子猫――
こりゃ言い直すべきだな。子猫の皮を被った化け猫は、おめえさんが時々見かけた奴と同一さ。
奴とはこれからジョウトを旅する途中で運悪くはぐれちまうんだが、まさか生き残っていて、それもビッパが友達として
連れてきて、シンオウのあっしの前に再び現れるなんざ、本当に腰を抜かしそうにぶったまげたよ」――

 ――
「もう勝手にしやがれ。これで目的は果たしたんだろ。嫌な奴に見つかる前にさっさと行くぞ」
 半ばやけくそになって、あっしは言った。とりあえずまだ少しでも逃げおおせる可能性がある内に、
早く脱出してしまいたい。このフロアの見張りをしている、あのゲス野郎に見つかってしまえばお終いだ。
「“嫌な奴”とは、何のことかね? そして、どこに行こうというんだヤミカラス」
 聞き覚えのある、二度と聞きたくもなかった虫唾の走る嫌味ったらしい声が、部屋の一角に響いた。
その方に振り返る間もなく、焼け付くような熱があっしの横擦れ擦れを過ぎ去り、マフラー野郎達の方に
向かって赤々とした火炎の帯が襲い掛かる。
「危ない!」
 咄嗟にあいつはニャルマーとコリンクを炎が及ぶ外へ突き飛ばし、自身も素早く逃れた。


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