第40章
[14]
「……僕は、僕達はそんなにピカチュウさんにとって頼りないですか」
わなわなと少し震えるようにしてロズレイドは話す。
「ど、どうしたというのだ」
「笑顔で迎えようと話し合ってはいたのですが、どうも僕には無理そうです。
……あなたが僕達を置いて一匹で行ってしまった後に一度、せめて消息だけでも聞けないものかと
あの洞窟を訪ねてみようとしたんです。しかし、僕達が通ってきたはずの道は最初から無かったかのように閉ざされ、付近に住む方々に聞いて回ってもその存在を確かに知る者すらいなかった」
ロズレイドは一冊の本をどこぞから取り出して見せる。
「そして困り果てた僕達が縋り着いたのが、人間の知識。それも、行き着いたのは、シンオウの神話に関する本です。
生と死の混じる地、死した者の還る場所。あの泉と洞窟は、恐ろしげな尋常ならざる地であるように謳われていた……」
ロズレイドはぱらぱらと本を捲り、開いたページを突きつけるように俺に見せる。俺に人間の文字は分からないが、その挿絵――暗闇の中で吼える、幾つものおぞましい触手を生やした長虫のような竜の姿――が目に入る。
「破れた世界の主、生死の狭間に住まう者、反物質の支配者、ギラティナ神の姿だそうですよ。
カントーでの一見の後、あの洞窟へ至る前、ゲンガー達に案内された不気味な道の途中で見た巨大なポケモンに、細部は違えどいやに似ていると思いませんか?」
「――!」
「もうあなたとアブソルさんが二度と帰ってこないのではないのかと、僕達はとても不安でした。
いえ、正直な所、今も不安で堪りません。また不意にあなた達は姿を消して、今度こそ帰ってこないような気がしてね」
今回もどうにかうまくこやつらを誤魔化すことは出来ると思っていた。しかし、
「旅中の僕達の示し合わせたかのような記憶の欠落、あまりに神出鬼没に現れては関わってくるミロカロスさん達、その度に何かを秘し隠すようなあなたの態度、今まではどういうわけか思い返そうとも考えられませんでしたが、思い返せば不審なことが多すぎる。あなたは、あなた達は一体僕達に何を隠しているんですか?」
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