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《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

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[63]１０月１２日

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昨日オペは無事完了し、今は病室のベッドで麻酔から覚めるのを待っている。

眠い。
だけど銀時が目覚めなかったらどうしょう…という不安が頭をもたげ、眠る事が出来ない。

気がつけば東の空に陽が昇っていた。

・―・―・―・―・―・

早朝から、局長がお見舞いに来てくれた。

｢聞いたよ。大変だったね…。

万事屋を斬った攘夷志士は我々が逮捕したから、安心しろ。

…あ、そうだ。昨日から何も食べてないんだろう。

ほら、これ食べなさい。｣

手渡されたバッグには、コンビニのパンやおにぎりやジュースがぎっしり入っていた。

｢バッグはまた今度返してね。

オレお買い物行けなくなっちゃうから。｣

局長はエコロジストなので、エコバッグを愛用しているのだ。

｢一緒に食べよう｣とおにぎりを手に取った局長が、ピリピリと包装を剥ぎながら話し始める。

｢華蓮さん、入籍の事…

お母さんに話してないだろ。｣

さすがだな。お見通しだったのか。

コーヒーの紙パックにストローを挿していた私の手が思わず止まる。

｢…事後報告するつもりです。｣

今まで私の事など顧みず、勝手に離婚して、勝手に再婚して、挙げ句私の帰省する場所を奪った。

そんな母に事前報告して｢安定収入の無い人はダメ｣などと反対されてみろ。

これほどバカにされた人生はない。

上手に巻けなかったいびつなおにぎりを一口頬張り、局長が私を諭す。

｢オレはね、隊士全員オレの実の弟・妹だと思ってるよ。

その大事な妹がさ、ある日『入籍したから～』なんて帰って来てみろよ。
オレ、『何で事前に言わないんだよぅ』って、悲しくて泣いちゃうよ。

兄のオレでさえそうなんだ、お母さんなら尚更なんじゃないかな。｣

うつ向いて白いシーツの皺を眺める私に、局長が続ける。

｢そりゃあね、今まで散々お母さんに振り回された人生だった事は知ってるよ。
華蓮さん良く頑張ったと思う。

でもやっぱり連絡はしなくちゃね。

お母さんきっと喜んでくれるよ。

…任せとけ！もしも万事屋の事を反対されたら、オレが必ず説得してやるから。

『金は無くても、必ず華蓮さんを幸せにする男です』

ってな。｣

ありがとう、局長。

私はケータイをかけられる玄関まで出て行った。

・―・―・―・―・―・

早速母に連絡した。

母は驚きはしていたが、｢自分は反対出来る立場ではない｣と、アッサリ結婚を許してくれた。

｢華蓮なら私のような失敗はしないはず。

幸せになれるわ。｣

そう言って、母はかすれた声で電話を切った。

切れる直前に鼻をすする音がしたのは気のせいだろうか。

・―・―・―・―・―・

病室に戻ろうと廊下を歩いていると、銀時の部屋が何だか騒がしい。

｢あ、銀ちゃん目が覚めたアルか!!｣

｢良かった～。目を覚まさなかったらどうしようかと思いましたよ。｣

どうやら神楽ちゃんと新八君も来てくれたらしい。

急いで病室に入ると、三人が嬉しそうに銀時を覗き込んでいた。

｢前みたいに記憶喪失とか嫌ですよ。

ちゃんとボクらの事、分かりますか？｣

新八君が心配そうに問うと、麻酔切れたてで朦朧としながらも、銀時は答えた。

｢…ゴリラ…酢こんぶ娘…駄メガネ…それから…

……オレの嫁さん。｣

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