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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[31]３月１６日(沖田)

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土方のヤローが入院した。

なんかデッカい病気かと思ってちょっと喜んだのに、ただの盲腸だと聞いてものすごく落胆した。

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「トシの手術、成功したって。

経過も順調だってさ。」

病院から帰って来た近藤さんは、玄関の上がり框に座って靴を脱ぎながら、嬉しそうに話した。

「じゃあすぐに仕事にも復帰できますね。

良かったァ。」

山崎、お前そんな嘘臭ェ芝居打ったってバレバレなんでィ。

俺と同じ、どーせ腹ん中じゃあ「土方死んじまえ」って思ってたんだろうがィ。

おっ、そうだ！

俺はなんて頭が良いんだ。素晴らしい案を思い付いてしまいやしたぜィ。

あまりの嬉しさに、ニヤニヤが溢れて止まらない。

「近藤さん、俺ちょっと土方さんとこに行って来まさァ。

行くぞ、山崎！」

・―・―・―・―・―・

「珍しいじゃないですか、沖田隊長。

いつも土方さんを目の敵にしてんのに、今日に限ってお見舞いだなんて！」

「はァ？

俺がいつ[お見舞い]なんて言った。

俺は[土方んとこに行く]としか言ってないゼィ。」

俺達は受付で教えられた通りエレベーターに乗り、５０８号室に向かった。

チン♪

エレベーターから降り、順番に部屋番号を確かめながら進むと、一番奥の右手に【５０８号室　土方十四郎】と書いた表札が見えた。

ここか。

チッ、こいつ生意気に個室なんか取ってやがる。

｢だって俺、天下の真選組副長だしィ～｣みたいな？

｢部下いっぱいいるしィ～｣みたいな？

｢泣かした女は数知れずだしィ～｣みたいな？

｢だから個室ぐらい取らなきゃでしょ～｣ってか？

フン。それがどーした。

そのお前の築いて来た功績を、俺が今から全てぶち壊してやる！！

「おい、山崎。

今アイツがなにしてるか、お前監察方なんだからちょっとコッソリ見て来い。」

山崎はコクリと頷き、壁と床を伝いながらベランダへと回った。

そして数分後、服に付いたホコリを払いながら小走りで帰って来た。

「今はグッスリおやすみ中の様です。」

そうか。寝てやがるのか。

「よし、チャンスだ。入るぞ山崎！｣

俺は白いドアをそっと開き、ヤツの横たわるベッドまで近付いた。

お天道様輝く真っ昼間だというのに、ヤツはマガジン読みながら爆睡してやがる。

みんな汗水鼻水垂らして働いてる時間だってのによォ…。

よし、俺が月に代わってお仕置きしてやるぜィ！！

俺は持参した紙袋から、油性マジックを取り出した。

「な…何するつもりですか、隊長？」

俺の唐突な行動に山崎は驚いた様子だったが、知らん顔して山崎にそれを手渡した。

「[肉]って書け。」

「は？」

「まずは手始めに、額に[肉]って書け。」

俺の命令は絶対だ。

山崎は一瞬躊躇ったが、気を持ち直してマジックを握り締めた。

根がマジメな山崎は、こんなアホらしいミッションも真顔で遂行した。

「出来ました、隊長！

…ププッ…」

土方の眉間上部には、なかなかの達筆で[肉]と書き込まれた。

「よし、よく出来た。

次はコレだ。」

俺が手渡した物を広げ、山崎は息を飲んだ。

「あの、コレ…紙オムツ？」

「履かせろ。」

「は？」

「履かせろっつってんだよ。」

「イヤ、さすがにそれは…」

「アレ、最近お前、耳悪い？」

俺は自慢の愛刀[菊一文字]の鯉口を切ってみせた。

山崎は慌てて土方の足元に駆け寄った。

顔中冷や汗をかいている。

しかしそこは人知れず任務を遂行する監察方だ。さすがの手付きで慎重にパンツを下ろし始めた。

土方を起こさぬよう、少しずつ少しずつ、時間をかけてずり下ろす。

「お、お前なかなかやるねェ。

何、そーゆーのってどこで習うの？

ソープ？デリヘル？」

「違いますよ！

昔、[行け！稲中卓球部]の田中が、木下の姉ちゃんのパンツ下ろす時にレクチャーしてたんです。」

その時だった。

「んん…」

人の気配に気付いたのか、土方が寝返りを打った。

ヤベッッッ！！

俺はドキリとし、山崎を止めに入ろうとした。

しかしその瞬間

山崎は一気にパンツを脱がし終えた！

「ふぅ～。ようやく寝返り打ってくれた。

この瞬間を待っていたんですよ。」

なるほど、寝返りした時の摩擦に便乗すれば、パンツの摩擦も気付かないって訳か！

やるな山崎。お前だけは敵に回したくねェＮｏ.１でさァ。

さて土方は下半身スッポンポンになった。

このままで帰っちまうのも面白いが、これではそこらの安っぽいドッキリ番組となんら変わりゃしねェ。

予定通り紙オムツも山崎のナイステクにより、履かせる事に成功した。

その後も山崎の丁寧かつ的確な処置により、土方は見違える程の芸術作品に生まれ変わった。

紙オムツ一丁で額には[肉]の文字、手にはタバコの代わりに哺乳瓶、口にはおしゃぶりをくわえさせ、頭にヒラヒラのキャップをあしらってみた。

「ご苦労だったな、山崎。

さて、ずらかるとしやすかィ。」

満ち足りた笑顔で、俺達は病室を出た。

ざまーみろ土方。

「あら、土方さんの御面会の方ですか？」

丁度そこへ、ナースが定時の検温にやって来た。

俺達は黙礼し、立ち去った。

しばらくすると、後ろから、廊下中に響き渡る悲鳴が聞こえた。

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