第41章
[102]
何か打開策は無いか、ロズレイドは頭を巡らせる。自分の毒や草の技では、毒蜘蛛達には殆ど効き目が無い。
だが、そういえば、まだスボミーからロゼリアであった時、危機的状況において時折発現していたあの念動の力。
――前にトレーナー用の教本か何かで読んだことがある。毒を持つポケモンには念力などの超能力が有効である、と。
あれを引き出すことが出来れば、イトマル達を退けられるかもしれない。長らく使う機会がなかった上、
上手く制御できるかは分からないが、やってみる価値はある。ロズレイドは集中し、己のどこかに眠っている力を
呼び醒まそうと頭の奥隅々まで意識の根を伸ばした。
――「何が何でも慣れろ、死ぬ気で対処法を編み出せ。オメーにもう後はねえ」
意識の根が触れて引っ張り出したのは、いつかのマニューラの言葉だった。何故だってこんな時に?
不可解に思いながらも、ロズレイドはその時を想起する。
確か、あれは僕が剣の稽古をつけてもらおうと、キッサキのマニューラさん達のアジトにお邪魔させて貰っていた時だったっけ。
あの”つーのつーの”うるさいニューラさんにこっぴどく負けて意気消沈している僕に、マニューラさんは厳しくそう言ったんだ。
あんなまるで冷凍庫のようなアジトの奥深くにまで押し込まれ、何て無茶苦茶ばかり言うんだと思ったけれど、
その言葉達を胸にバネに、歯を食いしばって最後まで諦めなかった。その結果、僕は冷気にもあのニューラさんにも打ち勝ち、
打ち解けることが出来たんだ。出来るだけの力を掴み取ったんだ。
今の僕なら、燃える様に暑い日照りの中だって、体が押し潰されそうな程の豪雨の中だって、耐え切って順応してみせる。
どんなに天気が気まぐれに、時に激しく目まぐるしく移ろおうとも、等しく悠然と受け入れる空のように――。
意識の根が、力の片鱗に触れる。すかさず絡めて捉え、一気に引き上げていくと同時に、ロズレイドは目を見開いて、
目前まで迫ったイトマルに向けてその力を解放した。その瞬間、無意識に突き付けた腕の花から無色透明の泡のような
球体が放たれる。泡のような球体はイトマルが触れると忽ち大きな風船が割れるような音を立てて炸裂した。
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