暴走堕天使エンジェルキャリアー


[50]vs ANGEL CARRIER 前編


パン、パン、パン。

室内に乾いた音が響く。銃口は九十九に向けられている。
だがその銃弾は全て、ガブリエルの腕で防がれた。ガブリエルは九十九を胎内に取り込むと、目を赤く光らせ、獣のような咆哮を上げる。
そしてそのまま量子化し、部屋から消える。次にガブリエルが現れたのは、東京迎撃都市―元特務隊本部の真上だった。
そしてそこに、黄色いエンジェルキャリアー0号機がゲートから現れる。
「失念していたよ。君はクラスAだったね。」
「どういう意味だ?」
「エンジェルキャリアーの覚醒率に係わるクラス分けだよ。」
「あんたにカテゴライズされる覚えは無いね。」
二機のエンジェルキャリアーが向かい合う。やがてしとしとと雨が降り出す。
「さて…談笑はもういいかな?」
「そうですね。」

ガブリエルが力強く地を蹴る。一瞬で0号機の懐に飛び込んだガブリエルは身体を捻り、横っ面目掛け踵蹴りを放つ。
だが0号機は蹴りを前腕で受け止める。ガブリエルはそれを待っていたようで、そのまま身体をもう一捻りさせ、両足で0号機の頭部を挟む。そして今度はバック転をかまし、0号機を脳天から地面に叩きつける。
「くっ!」
0号機は豪快に音を立て、頭蓋を地面に埋める。しかしすぐに体勢を立て直し、ガブリエルと距離を取る。
「ふははははは!流石はクラスA、いい立ち回りをする。だが!」
0号機が地を蹴る。ガブリエルはステップを踏み、後方へ逃れる。
「読みも素晴らしい。だがね…」
0号機は素早く、そして大きくもう一歩踏み込む。
「早いっ!」
0号機は右腕を白く輝かせ、ガブリエルの胸に向け腕を伸ばす。
「ガードが間に合わない…くそっ!」
ガブリエルは自身の足を自身で蹴る。そしてバランスを崩し、豪快な音を立てて背中から倒れこむ。
これで間一髪、0号機の攻撃をかわす。だがガブリエルの不利に変わりはない。
「面白い策だ。―だが君の負けだ。」
0号機がゆっくりと右腕をガブリエルに向ける。そして腕を白く輝かせる。
「死にたまえ。」
山本は口角を吊り上げる。そしてトリガーに指を掛け、引く。
その瞬間、ガブリエルは右腕を突き出し、シャイニングフィンガーでマイクロブラックホール弾を虚空へ跳ね返す。
そしてその場でバック転をし、体勢を整える。
「なんつー奴だ。MB砲内蔵だと?」
九十九が吐き捨てるようにつぶやく。その声は山本にも届いていた。
「マイクロブラックホール砲が君たちだけのものと思ってはいかんな。私は統合幕僚長なのだよ?自衛軍も戦研も全て私の指揮下にある。」
「けっ…私情で特務隊を売った奴の何が統合幕僚長だ…」
「ふっ。今からでも遅くない。私と共に来たまえ。」
「願い下げだ。」
山本はふー、と溜息を漏らす。そしてモニターに映るガブリエルを睨みつける。
「ではここで死にたまえ。」
そう言って0号機は右腕を上げ、マイクロブラックホール弾を連射する。ガブリエルはそれら全てをシャイニングフィンガーで虚空へ弾き飛ばす。
「連射かよ?戦研め、出し惜しみしやがって…!」
何発かマイクロブラックホールを弾くと、九十九の右手が痛み出す。
(このままじゃ埒があかねえな。右手ももうすぐ限界だし…)
すると突然、0号機がマイクロブラックホール弾を撃つのを止める。

(弾切れ?―違う、誘ってやがる…けど今しかないか。)
ガブリエルは地を蹴り、高く空に舞う。そして何回か身体を捻り、0号機の脳天目掛け踵を振り下ろす。
0号機は紙一重で踵をかわし、バックステップを踏む。ガブリエルは素早く体勢を戻し、拳を突き出す。
0号機は掌で拳を受け止める。そこに間髪入れずガブリエルの踵が炸裂する。
しかし0号機はそれすらも紙一重でかわす。そしてガブリエルが背中を見せた一瞬の隙に、右腕からマイクロブラックホール弾を放つ。
刹那、0号機の腕がガブリエルの脚に弾かれ、マイクロブラックホール弾は虚空に放たれる。そしてガブリエルは身を翻し、0号機の首筋に白く輝く右腕を突きつける。
「ゲームオーバーだ。」
「それはどうかな?」
ガブリエルの腹に、0号機の左腕が突きつけられている。お互いにもう半歩踏み込めば、致命傷になっていっただろう。

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