暴走堕天使エンジェルキャリアー


[55]東京決戦 中編


「准尉っ。」
医務室に息を切らした春日部がやってきた。
「春日部。」
「私が処置します。春日士長、聞こえますか?」
「…聞こえるよ…」
春日が力無い声を振り絞って応える。春日部はうん、と頷くと、ベッドごと春日を処置室へ運び入れる。
それを見届けた彩夏は長門の腕を強引に掴むと、つかつかと医務室を出る。
「なんですか、二尉…」
「ラファエルを出すわ。協力しなさい。」
「無茶ですよ、修理出来てないんですから。シナプスが暴走して二尉の身体に‐」
「そんなこと解ってるわよ!」
彩夏は長門に振り返り、怒声をあげる。その瞳には、薄らと涙が浮かんでいた。
「二尉…?」
「つーくんも戦ってる!士長もあたしを庇って撃たれた!朝霧も夕潮も高良も春日部も!だったらあたしも戦わないと!」
「‐」
一息でそう叫ぶと、彩夏は小さく嗚咽を漏らす。長門はその様子を見守ると、彩夏の肩に自分の手を添える。
「解りました。行きましょう。」
その言葉に彩夏は顔を上げ、涙を拭って格納庫へ走っていく。

「くそっ!放せ!」
激痛を堪えながら九十九はレバーを乱暴に前後させる。だが0号機に絡みついた四肢は一向に0号機を放そうとはしない。
だが突然BEASTは奇声をあげ、四肢を緩めた。0号機は真っ直ぐに地上へ落ちていく。
九十九が横目で見ると、ビルの陰からマイクロブラックホール砲を構えるラファエルの姿が見えた。
「つーくん、大丈夫!?」
0号機は落下しながら身体を捻り、綺麗に着地する。
「あやか。助かったよ。」
「お礼なら長門准尉に言ってあげて。ほとんど一人で直してくれたんだから。」
「そうか。じゃあ後で一杯おごってやらないとな。」
九十九はふっ、と薄く笑う。
「賛成。でもその前に‐」
「こいつを片付けないとな!」
九十九は言うが早いか、助走をつけて宙高く飛ぶ。その後方からはラファエルがマイクロブラックホール弾を放つ。
BEASTはマイクロブラックホールを翼で弾く。だがその直後、0号機がBEASTの翼に取り付く。
取り付かれたBEASTは0号機と共に落下していく。そして地上激突寸前に0号機が身体を捻ると、BEASTは脳天から地上に激突する。
そして間髪入れずにラファエルがマイクロブラックホール砲を放つ。

BEASTは頭をアスファルトに埋めたまま両翼を羽ばたかせる。すると宙に舞った羽根が光を放ち、その姿をジュニアに変える。
ジュニアはマイクロブラックホールを空高く弾き飛ばす。
「ジュニアまで出してきやがった…」
BEASTは頭をアスファルトから引き抜くと、翼を羽ばたかせ新たにジュニアを3体生み出す。そしていやらしく口角を吊り上げる。
「ジュニアが4匹…ちょっとばっか不利かしら…」
「そうだな…あやの体のこともあるしな。」
「あら、気付いてた?」
気丈に振舞う彩夏の顔に、脂汗が浮いていた。どうやら強引に組み込んだ頭部のパーツが拒絶反応を起こしているらしい。
「あんまり芳しくはない、ってとこかしら。」
「だったら早めに終わらせるぞ。着いて来れるか?」
「もちろんよ。」
二機のエンジェルキャリアーがBEASTに対面し構える。

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