暴走堕天使エンジェルキャリアー


[52]vs ANGEL CARRIER 後編


管制室の前面に配された巨大なモニターに、小笠原以下、管制室に居る全ての者の目が釘付けになっている。
「何で、動かないんですかね?」
桐嶋が小笠原に尋ねる。
「動けないんだ。居合いの達人同士の真剣勝負のようにな。」
「でもそれでは…」
「ああ。戦いは終わらない。」
そう言うと、小笠原はキーボードのボタンを押し、オープンチャンネルで通信を開く。
「管制室は我々特務隊が奪還した。自衛軍兵も全員投降した。山本幕僚長、あなたの負けです…」
「だ、そうだ。どうする?」
九十九が口を開く。
「そうはいかん…予定外ではあるが、致し方ない。君の魂を頂こうか!」
0号機の左腕が白く光る。それを察知したガブリエルは身体を捻り、0号機の首に突きつけた右腕を突き出す。
だがそれよりも早く、0号機の左腕がガブリエルの胸元を切り裂いた。
「ああっ!!」
九十九の表情が痛みに歪み、ガブリエルは地面に倒れこむ。そして0号機はガブリエルを踏みつけ、右腕を掴む。
「厄介な腕だからな。」
そう言うと0号機は躊躇することなく、ガブリエルの右腕を引き千切る。
「うああああぁぁ!!」
管制室に九十九の悲鳴が響く。その悲鳴に耐え切れず、小笠原は強く目をつぶる。
その悲鳴は、医務室からモニターしていた長門の耳にも届いた。長門はたまらずに、インカムを着けて管制室にチャンネルする。
「桐嶋、火器管制はどうなっている!?」
長門らしからぬ、語気の強い言い方だった。
「システムオフライン、完全にスタンドアローンだ!」
「なんとかできないのか!?」
「今やってるよ!」
そう言いながら桐嶋は凄まじい速さでキーボードを叩いている。だが火器管制システムに繋がらない。

ガブリエルのコクピットでは、九十九が悲鳴をあげながら右肩を押さえている。仰向けに倒れたガブリエルの胸元に、0号機の白く光る左腕が伸びる。
そしてそのまま胸を貫き、九十九ごとコクピットブロックが引き剥がされる。生体インターフェイスも破壊されたので、九十九の悲鳴は途絶えた。
山本ははコクピットブロックを大事そうに抱えると、口角を吊り上げる。
「では行こうか…二人で鼎の元へ…」
0号機はふわっ、と浮かぶと、量子化して消えた。

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