第40章


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「宿直かね、ご苦労さんだな」
 窓を覗き込みながら、デルビルは嘲笑うように呟いた。
 地下の線路に下りるには、まずあの大きな窓口付きの事務所に隣接して設置されている、
妙なゲートのような機械――改札機というらしい――の間を通り抜けて行かなければならないようだ。
俺一人ならば軽々と掻い潜っていけるだろうが、人間の子ども程の図体を持つ奴数名が
何度もぞろぞろ行ったら、幾らあの不精そうな駅員とはいえ気配に気付くだろう。
どうにかして、しばらくの間あの場から駅員をどかしたい。
「やっちまうのか」
 声を潜めてデルビルが尋ねる。
「いらぬ騒ぎが起こる。人間といえど敵意の無い者に大きな危害を加えるつもりは無い」
「甘ちゃんだな。そんなんで悪の組織のボスやってんのか」
 デルビルが鼻で笑うが、無視した。俺は貴様らのような見境の無い悪とは違う。

 さて、どうしたものか。一旦、窓から身を隠し、ミミロップ達にも意見を募ってみる。
「誘き寄せて後ろから、こうガツーンと」
 チョップする真似をしながらミミロップが言った。
「普通の人間は我らよりずっと脆い。力加減を間違えたらどうするのだ」
「マージの、あやしいひかりはー?」
 ムウマージが異次元の色彩ともいうべき人魂のようなものをふよふよと浮かばせる。
「悪くはないが、いざ正気づかれてしまった後に光の正体がポケモンの仕業と思われかねん。
ただのいたずらと片付けられればよいが、発電所でいざこざが起きたばかりだ。
その犯人と関連付けられて、線路内まで捜査の手が伸ばされるかもしれん」


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