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《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

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[57]９月１０日

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ついに決戦の時が来た。

外の広場には警察庁長官･松平片栗粉氏をはじめ、局長以下隊士全員が集まっている。

それらに囲まれる形で、私と菜々美は向かい合っている。

私の腹は既に決まっている。

それ故に清々しい気分だ。

一人の隊士が私達の側に歩み寄る。

｢一番隊隊長、沖田総悟が本日の審判を務めさせていただきやす。

それでは時間無制限です。
よーい…｣

総悟君のピンと伸ばした指が空を指した。

｢はじめ!!｣

総悟君の合図を皮切りに、菜々美が刀を構えた。

さすがに剣の腕を認められて入隊しただけの事はある。

隙の無い、見事な構えだ。
敵ながら美しいとさえ感じる。

彼女は挑発的な目で私を見つめている。

しかし私はその彼女には向かって行かず、松平氏の方へ歩いて行った。

｢永らくお世話になりました。｣

昨夜書いた辞表と腰の【百華】を松平氏の前に並べ、深くお辞儀をした。

｢私は意気地の無い、不甲斐ない、ダメ隊長でした。
『仲間を斬れない』等と甘ったるい考えしか出来ない、精神力の弱い隊長です。

やはりこのような大役、私には無理だったようです。

菜々美さんなら何物にも恐れる事なく突き進む力量があると、私は確信しています。

私のような者を認めて下さった松平さん、これまで御指導下さった局長はじめ男子隊士の皆さん、そして…

私の娘たち。

大変お世話になりました。

私は菜々美さんに席を譲ります。｣

まさかの敗北宣言に、広場は静まりかえった。

さようなら、真選組。

さようなら、娘たち。

私はまたただのオバサンに戻るよ…

｢やだ！行かないで、隊長!!｣

一人の女子隊士から声があがった。

｢私、まだ隊長から良い男性と悪い男性の見分け方、教わっていません!!

このままじゃまた詐欺師に引っ掛かっちゃいますよ!!｣

サツキだ。

｢私も、まだ秋向きメイクを教わっていません!!

次の非番の日のデート、どうしたらいいんですか!!｣

ルミ子…

｢僕、四駆車に乗り足りません!!

もっともっと乗らせて下さい!!｣

｢華蓮さん、冷蔵庫にあった俺のヨーグルト勝手に食べたでしょ!!

『今度返す』って言ったじゃないスかぁ!!｣

｢かぶき町の見廻りどうするんですか!!

華蓮さんいないとあんな物騒なとこ歩けません!!｣

…みんな…

ありがとう。

でも、もう試合に負けたんだから…

｢ハイ華蓮ちゃん、残留決定～。｣

…え？

松平氏の言葉に、そこにいた全員が首を傾げた。

｢俺ぁね、試してたんだよぉ～ぅ。｣

試してた？

｢もし仲間を斬るような女なら、隊長にしといちゃいかんだろぉ～ぅ。

やっぱ隊士大事に出来ないと駄目ダメぇ。

だからそれを試した～の、オジサンは！｣

松平さん…

｢それに、どんだけ華蓮ちゃんが皆から尊敬し、信頼し、必要とされているか、分かった～ろぉ～う。

だから、もう二度と辞めるなんて考えんじゃ～ねぇ～よぅ。｣

ありがとうございます。

本当にありがとうございます…

安堵した途端、ホロホロと涙が溢れ出た。

｢うわぁ～ん、真剣怖かったよぉ～!!

私、真選組辞めさせられるの、やだったよぉ～!!

やっぱみんなとここにいたいよぉ～!!

うわぁ～ん…｣

涙が止まらなかった。

こんなに子供みたいな泣き方をしたのは久しぶりだ。

私は広場の真ん中でしゃがみ込んで泣きじゃくった。

｢華蓮さん

早く泣き止まねぇと、胸のコンコルドクリップが濡れやすぜぃ。｣
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