第40章


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 ・

 そろそろ交代の時間だ。俺はデルビルと共に――結局、あれだけ張っていた強情より眠気の方が勝り、
アブソルとムウマージは眠ってしまっていた――ロズレイド達を起こしにかかる。
まだ眠いとぶつくさ文句を言いながら起き上がる三匹を尻目に、俺はごろりと横になってさっさと目を瞑った。
途端に、腹を減らした睡魔がごちそうが来たとばかりに大喜びで触手を伸ばし、あっと言う間に意識を絡みとって、
俺を深い深い深遠へと飲み込んで――

 茶色の横縞が二本入った黄色い大きい背と、その背に安心しきっておぶわれている小さな俺。
これは、いつかにも見た夢だ。だが、以前見た時と大きく違うのは、俺はその背の偉大さを知っている、
感じる温もりの意味を分かっている。
 ……そのせいだろうか。濃い霞に包まれたように見えなかった、背と俺を取り巻く周りの情景にも、
少しばかり目をやることが出来るようになっていた。ここはどこの林の中なのだろう。
葉を紅く綺麗に色づかせた木々が並ぶ、見たこともない景色だ。少なくともカントーではないように思う。
 横に並ぶようにして飛んでいる柄が悪そうなヤミカラス――何だか、見覚えのある仏頂面な気がする――
は仲間だろうか。そして、もう一匹、まだ誰かこの場にいる、いや、いたような気がする。
“それ”を思い出そうとすると、急に背にぞわぞわと怖じ気が走り、体がずんと重くなり、左耳がひりひりした。
確か、この感覚は――答えが出掛かった時、急に俺は何かに捕まれて黄色い背中から引っぺがされ、
後ろから押さえ込まれ、成すすべなく――そうだ、“これ”は、や、やめ、やめてくれー!……――

『ガブッ!』



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