暴走堕天使エンジェルキャリアー


[54]東京決戦 前編


「BEASTだと…?」
モニターを見つめ目を丸くする小笠原。しかしモニターにははっきりと、目の前にいる異様な者を捉え、「Beaming Easter of Angel's STabber」と称している。
うずくまる山本のいる部屋のモニターにも、同じ文面が映されている。
「13人目のBEAST…」
そう小さくこぼした山本に、0号機の九十九が告げる。
「新約聖書に伝えられる十二使徒、その最後に数えられるイスカリオテのユダ。しかし…」
「ユダの死後に加えられた最後の使徒がいる…」
医務室のモニターを見つめながら、彩夏がつぶやく。
「そう。その名は、マティア。」
九十九が括る。そして目の前のBEASTを見つめる。
うな垂れた上体をゆらゆらと揺らし、首を捻るBEAST。やがてゆっくりと首を上げ、0号機に目を合わせると、両目を妖しく光らせる。
刹那、BEASTから衝撃波が放たれる。0号機は宙高く飛び、衝撃波をかわす。
そしてそのままBEASTに突進し地を蹴り、身体を捻り踵落としを繰り出す。BEASTは踵を両腕で防ぐと、大きく口を開く。
そして両目を光らせ、悲鳴のような咆哮をあげる。
「くっ!」
0号機は上体を捻りBEASTの側面に着地する。悲鳴は空間を歪ませながらウェポンビルに直撃し、ビルを爆散させる。
「いつかのやつか!くそっ…」
眉間に皺を寄せる九十九に、彩夏から通信が入る。
「そいつの悲鳴ならシャイニングフィンガーで相殺できるわ!」
BEASTは0号機に向きかえると、息を吸うように大きく仰け反り、その全てを吐き出すように勢いよく悲鳴を発する。0号機は右腕を水平に上げ、シャイニングフィンガーで悲鳴を切り裂く。
そしてそのままの姿勢でマイクロブラックホール弾を放つ。マイクロブラックホールはBEASTの眉間に直撃し、BEASTは大きく仰け反る。
「やったか!?」
小笠原がモニターに食い入る。
だがBEASTはぐるんと上体を直す。その頭部は一部が欠落していた。
だが傷口は直ぐに塞がり、両目を鈍く光らせる。

「魂の羽根の力だ…BEASTの羽根はそれ自体が高いエネルギーを有している。増して魂のオーブを取り込んだのだ。生半可な攻撃では致命傷は与えられない…」
山本がモニターを見上げつぶやく。
「ならっ…」
0号機はそのままの姿勢でマイクロブラックホール弾を連射する。その全てはBEASTに直撃し、BEASTの身体の所々が欠けていく。
だがその所々の傷口さえ、瞬く間に修復される。傷口が完全に塞がると、BEASTは翼を羽ばたかせ、宙高く舞う。
そしてもう一振り羽ばたくと、0号機の足元が妖しくうねる。それを逸早く察知した彩夏が0号機の九十九に叫ぶ。
「つーくん、避けて!!」
「え?」
刹那、0号機の足元から光の柱が立ち上り、0号機を宙高く舞わせた。そして0号機は空中でBEASTに羽交い絞めにされる。
「まずい!桐嶋士長、火器管制はまだ繋がらんのか!?」
小笠原が桐嶋に向き返り言う。その語気には力がこもっていた。
「駄目です、完全にスタンドアローンです!」

「くそっ、動けねえ!」
0号機のコクピットで、九十九は乱暴にレバーを前後させている。わずかに反抗する0号機を羽交い絞めながら、BEASTは0号機の首筋に噛み付く。
「ああぁぁぁっ!!」
医務室に九十九の悲鳴が響く。悲鳴を聞いた彩夏は拳をぎゅっと握りしめる。
管制室では、小笠原が爪を噛んでいた。


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