暴走堕天使エンジェルキャリアー


[42]音の教戒 前編


けたたましいアラームが鳴り響く中、春日以下管制官が慌ただしくキーボードを叩いていた。巨大なモニターには、ジュニア9体を引き連れ、太陽を背に輝くBEASTの姿が映されている。
「総員、第一種戦闘体制!繰り返す、総員第一種戦闘体制!キャリアー両機は準備次第順次発進!」
長い髪を後ろで束ねながら、管制室に小走りで小笠原が駆け入る。
「遅れてすまない。春日士長、状況を。」
「30分前にあさがおが探知、陸軍の防衛網を突破しつつ南下。目標は本部と思われます。」
春日がキーボードを叩きながら早口で伝える。
「陸軍に伝令。防衛網を維持しつつ敵を迎撃都市へ誘導させろ。キャリアーの準備は?」
「発進シークエンスにはいっています。R25ゲートから射出予定です。」
小笠原はうんと頷く。
「キャリアー両機の迎撃準備が整ったらミッションレコーダーを回せ。」

BEASTは周囲のジュニアを旋回させながら、陸軍の防衛網を押し寄せながら侵攻する。時折両目を光らせ、衝撃波を放ち攻撃ヘリを撃ち落す。
しかしその侵攻方向には、二機のエンジェルキャリアーが待ち受けていた。
「ジュニアが9匹…分が悪いな…」
九十九がつぶやく。するとコクピットに小笠原の声が響く。
「かなりな。気を引き締めてかかれ。」
「了解。」
ラファエルのコクピットには陸軍に誘導されたBEASTの姿が映されている。そしてBEASTが東京迎撃都市に侵入すると、ウェポンビルからミサイルが掃射された。
BEASTはジュニアを引き寄せ、ミサイルを防ぐ。すぐさま逆方向のビルからミサイルが掃射される。
BEASTは両目を光らせ衝撃波を放ち、ミサイル群を薙ぎ払う。
「行くぞ、あや!」
九十九の掛け声でエンジェルキャリアー両機が地を蹴る。
ガブリエルが先行し、BEASTの脇腹目掛けて蹴り仕掛ける。だがBEASTはジュニアを集結させ壁を作り、攻撃を防ぐ。
すぐさまガブリエルの後ろからラファエルが飛び出し、体を捻り踵落としを繰り出す。ラファエルの左足は見事にBEASTの脳天に直撃する。
「ヒット!」
彩夏が語尾にハートマークでもつけたような口調で黄色い声を漏らす。だがBEASTは倒れず、両目を光らせる。
「退がれ、あやっ!」
BEASTから衝撃波が放たれる。だがガブリエルは両腕を顔の前で交差させ防ぎ、500メートル程弾き飛ばされる。
一方のラファエルは衝撃波を利用し、身を翻しBEASTから距離をとり着地する。

「やっぱ一筋縄じゃいかないわね。」
彩夏はそう言いながらニヤリと笑う。
そしてラファエルが単機で突貫する。
「あや!」
仕方なくガブリエルも援護をしに走りだす。BEASTはジュニアを前面に展開する。
そしてBEASTが口を開くと、前面のジュニアも口を開く。そして奇怪な音を発する。
「なっ!?」
「何これ!?」
エンジェルキャリアーのモニターにノイズが入る。その後、耳を刺す悲鳴のような声が二人を襲う。悲鳴は管制室にも響いた。
「なんだこれは!?」
小笠原が耳を塞ぎながら叫ぶ。
「か、解析できません!」
ラファエルは頭から地面に突っ込み、豪快な音をたてながら倒れこむ。
更にBEASTはジュニアを全方位に展開させ、悲鳴をあげ続けている。やがてビルは崩れだし、街全体が悲鳴に揺れる。

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