第40章


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 もっと目にも耳にも感知されないような、それでいてなるべく穏便に事を済ます方法は……。
考えあぐねながら、俺はちらりとロズレイドを見やった。いつもこういった話し合いの時は決まって
積極的に参加してくるというのに、どこか上の空でぼうっとしている。
マニューラと離れてからずっとこの有様だ。握られた弱みをばらされやしないか、
気が気じゃないといったところなのだろうか。まったく、離れていても厄介な黒猫だ。
あの不敵な笑みと口から覗く鋭い牙を思い出す度、俺も苛立ちか、何かのトラウマなのか、
はたまた猫を嫌う鼠の血の性か、頭がずんと重くなり、耳の特に左耳の先がずきずき疼くようになった。
ギラティナの領域からシンオウに帰還してからだろうか。ああ、もう、考えるのはやめだ。

 とにかく、ロズレイドにずっとこんな調子でいられるわけにはいかん。そういえば、
草ポケモンの中には眠りを引き起こす花粉を作りだせる者がいると聞いたことがある。
粉ならばそっと漂わせるに限れば目に殆ど映らんし、音もないだろう。
泊り込みの勤務に疲れてついうたた寝……よくありそうな話ではないか。
「おい、ロズレイド、眠り粉を作ることは出来ぬのか?」
 聞こえなかったのか、ロズレイドの返答は無い。
「ロズレイド、眠り粉だ、ね、む、り、ご、な」
 声の調子を少し強めてもう一度俺は言った。ようやく声が届いたのか、ロズレイドはぴくと反応する。
「あ……はい、粉ですね、粉……」
 ぼんやりした様子で、ロズレイドは葉っぱを一枚取り出し、その上に手の薔薇から花粉をさらさらと出した。
手渡された葉っぱに包まれた花粉を、俺は訝しんで見る。……色が見るからに毒々しい。
念のため少量を近くの雑草にかけてみると、たちまち雑草は茶色く枯れ果てた。見守っていたミミロップ達も、
ひっ、と驚いて飛び退く。俺は慌てて小さな穴を掘り、慎重に葉っぱごと花粉を埋め立てた。


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