第40章


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 先程まで確かに樹の上に何も居なかった。緑と茶の中にあんな白い影があれば、
いくらなんでも見落とすはずはないのだが。音も気配もなく唐突に、まるで最初から
そこにいたかのようにペルシアンは現れた。ダークライの件で過去に神々に取り憑かれた事で、
こやつにも何か神の力の切れ端が残留しているのやもしれない。
奇妙な瞬間移動のような現れ方は、洋館でのボーマンダ――ディアルガを髣髴とさせる。
ぐうたらと惰眠を貪るのが好きなもの同士、気が合いでもしたのだろうか。
「……一先ず、出迎えご苦労」呆れの溜め息を堪えて、俺は何事もなさそうに言ってやった。
いちいち角を立てていたらこちらの身が持たん。
「ふふん、こちらこそわざわざカントーまでご足労おかけしたニャ。思っていたよりも
早い到着で驚いたニャ。足もとい、翼の速いプテラを送った甲斐があった見たいだニャー」
 すとんとペルシアンは枝から降り立ち、俺達を見回した。その途中、マニューラに目を留め、
ヒゲをぴくりと反応させる。
「ニューラ族らしきアナタは、シンオウからのお仲間ですかニャ? ボクがペルシアン、よろしくニャ。
種族は違えど猫同士、是非是非お近づきになりたいところだニャー」
 目にも留まらぬ速さでペルシアンは擦り寄り、両前足でマニューラの手を握った。
「お、おう……」
 さしものマニューラも少し唖然とした様子で応じる。
「いやー、ドンカラスとやらが送ってくるシンオウからの使者は、黄色いゴリラみたいのや、
痩せぎすの狐みたいのや、毒々しい色した蛙や、青い円盤みたいな変な奴らばっかりだったから、
アナタが来てくれて嬉しいニャー。どうかニャ、今度二匹でゆっくりと――」
「自己紹介それくらいにして、ミュウツー達の手がかりとなる情報を聞かせていただきませんか。
そのために僕達は来たんですから」
 二匹の間に強引に割って入り、ロズレイドは話を切り出した。その表情はどこかムスッとして、
ペルシアンを睨んでいるようだ。

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