第40章


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 濃厚な闇が包む地下を、俺達は黙々と歩を進めていった。代わり映えの無い一寸先も不明瞭な
暗闇を延々と歩いていると、耳に届いてくる周りの者達の足音も何だかくぐもって聞こえてきて、
足裏に感じる冷たいコンクリートの感触もどこか曖昧になり、手足がどこにあるのかすら茫漠としてきて、
本当に今この場に俺の体はあるのか、実は意識だけが本体を置いてけぼりにして歩いてきてしまった
のではないか等と妙な錯覚と妄想に捉われてしまう。
 いよいよもって変になってしまいそうな寸での所で正気を繋ぎ止めてくれる唯一の救いは、
トンネルの壁に定期的に備え付けられている非常灯だ。例えその光が風前の灯火の如く弱々しく、
一つ一つが離れた間隔でしか用意されいないとしても、まだ辛うじて自分の体がここに存在していて、
着実に前へと進んでいるのだと知らせてくれる。
 どのくらいの間、そうやって歩き続けたのだろう。地上はそろそろ空が白み始めた頃だろうか。
こんな地下トンネルの中ではまったく窺い知る事は出来ない。
「ねー、ちょっと休まない? ちょっと疲れてきたんだけど」
 気だるげなミミロップの声が暗闇に響く。それを皮切りに、他の者達も口々に疲労を訴え出した。
ペルシアンの所から殆ど休まず歩き通しだ、無理もないか。俺も少々疲れた。
「そうだな。次の電灯の下で少し休憩するとしよう」
 前方の電灯を示し、俺は言った。
 ようやく電灯の下まで辿り着き、俺は立ち止まって全員の点呼を取る。ミミロップ、ロズレイド、
ムウマージ、アブソル、デルビル、俺を含めて計六匹、ちゃんと揃っているようだ。
無いよりはまし程度の薄暗い明かりながら、自分自身や他の者達の姿をぼんやりとでも目で
確認できるというのは、大分気分的に楽になる。俺は安堵の息をつき、近場の壁に背を預けて座ろうと
したところで、急にミミロップがぴくりと耳を反応させて動きを止めた。
「誰か、後ろから来てる」
「なに?」
 ミミロップはその場にしゃがみ、床に手を触れた。
「えーと、数は一人、いや、一匹……?」
 集中した様子で目を閉じ、ミミロップは呟く。

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