第40章


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 これだけ思い出そうと頭を捻っても搾り粕程も記憶の一片が出てこないということは、
俺にとってどうでもいい事だったのだろう。頭に入る記憶の容量というのは、
目に見えずとも限りが有る貴重ものだと俺は思う。今まで食べたパンの数や、
踏み付けた雑草の数を一々記憶していたらあっと言う間にごちゃごちゃになって、
必要なものが引き出しにくくなってしまう。俺達ポケモンが何か良い技を閃いた時、
トレーナー共は必要ない技を一、二のポカン――あの衝撃は今でも身震いする――と
忘れさせてから覚えさせるだろう。誰だってそうする。俺だってそうする。

「ボーッとして、どうしたニャ? やっぱり知ってるヤツなのかニャ」
 ペルシアンに声を掛けられ、はっとして俺は引き戻される。
「いや、まったく知らぬな」
「ふぅん、その様子じゃ、ホントに知らないみたいだニャ。ま、ボクも関係ない、しかもオスのポケモンなんて
正直どうでもいいんだけれど、ストライクのヤツ未だに根に持ってて、会うたびに探せ探せうるさいんだニャー。
ミュウツーのことで大変で、あまり鳥も割けないから困っててニャ」
 何よりタダ働きさせようってのが一番気が乗らない所ニャ、ぼそりとペルシアンは呟く。
今、こいつの魂胆がちらりと尻尾を覗かせた気がする。助け舟だと思っていたものが、
実は何か曰く付きの船では無いかつついて確認した方が良さそうだ。
「それで、俺達に押し付けようというのか」
「その通りだニャ。シンオウから来たと知ればストライクもアンタらに船足の条件として捜索を頼んで、
ボクは面倒からオサラ――」ペルシアンはしまったと口を塞いだ。
 ……思った通りだ。セキチク行きもどうやらおいそれと乗っていい話じゃないらしい。
余計な厄介事を背負わされるのは好ましくない。もう一度考える余地がありそうだ。

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