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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[59]９月３日(土方)

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｢ま～た幕府のヤローがよォ、央国星から金を工面して欲しいんだとよォう。

で、その渡りをなァ、お前らで付けて来い～や。

どうやらバカ皇子が華蓮ちゃんの事を気に入ってるらしいからァ、そこを上手ァ～いこと利用しろ。

上手くいかなかった場合は…

腹切れ。｣

・―・―・―・―・―・

シンと静まりかえった座敷に、庭の鹿威しの音だけが鳴り響いている。

近藤さんと俺と華蓮と総悟は、松平のとっつぁんの命令により、今まさに央国星のバカ皇子…いやハタ皇子とその執事を料亭で接待している。

卓上には刺身の舟盛りやタンドリーチキン、すき焼きにエビチリに寿司と、和洋折衷豪華な食事を用意した。

おいしい御馳走に加え、お気に入りの華蓮がそばにいるとあって皇子はご機嫌の様子だ。

｢おぉ、聞いていた通りじゃ。

華蓮ちゃんはかわいいのぅ！｣

バカ皇子は華蓮の手をしきりに頬擦りしたり、撫で回したりしている。

｢かわいい上にバカ強いというではないか。

まさにワシの好みドンピシャじゃ！｣

華蓮は嫌そうな顔をしているが、必死で皇子の気色悪さに耐えている。

頑張れ！そのまましばらく耐えるんだ!!

国の存続はお前にかかっているんだぞ!!

涙目で訴えかけて来る彼女に、俺達はとりあえずガッツポーズを送ってやる事しか出来なかった。

・―・―・―・―・―・

酒も多少入り、バカ皇子はほろ酔いで良い気分になってきた。

チャンスだ！

ここで一気に畳み掛け、金策の約束を取り付ければ交渉は成立だ!!

近藤さんが姿勢を正し、皇子に向かって言った。

｢あのォ、バカ…いや、ハタ皇子。

今日ここにお呼び立てしたのは他でもありません。

実はまた我が幕府に、その…｣

｢金じゃろう。分かっておったわい。｣

バカ皇子は案外バカではなかったらしく、こちらの要求を分かった上で来ていたようだ。

それなら話は早い。

スムーズに事が運び、俺達四人は胸を撫で下ろした。

しかし、バカ皇子はタダでは動かなかった。

｢おぬしら、何か勘違いしてはおらぬか。

ワシは今までのようにポイポイと金だけ渡すような事はせぬぞ。

今回は条件がある。｣

皇子は華蓮を指差した。

｢華蓮ちゃんを我が国に貰い受ける!!｣

血走った目で俺達に向かって叫んだ。

華蓮はアイラインバッチリの目をさらに大きくして驚いている。

｢華蓮ちゃんをくれたら金を支援してやってもいいぞよ。｣

バカ皇子はまた手を頬擦りした。

｢いや、皇子。それはなりません。

坂田は既婚者ですので、皇子の元へ参る事は出来かねます。｣

近藤さんが頭を下げながら説得しようとすると、皇子は華蓮の頭を撫でながら言った。

｢じゃあ旦那ごと星に来れば良いではないか。｣

ハァーッッ!?央国星って多夫一妻制!?

あるいは多夫多妻制？

あるいは…皇子って両刀使い？

何にしろ華蓮をバカ皇子のところへなど嫁がせてなるものか！

｢なりませんと言っておるでしょうに!!

他の要求ならお受けしますが、坂田をやる事だけは絶対に出来ません!!｣

俺は卓を強く叩いた。

すると皇子と執事は一瞬ビクッと身体を震わせた。

しかしすぐに立ち上がったかと思うと、バカ皇子は後ろから華蓮を抱き締めて言った。

｢イヤじゃ!!絶対イヤじゃ!!

ワシは華蓮ちゃんが欲しいんじゃ!!

新しいペットが欲しいんじゃ!!｣

……え？今何て……

｢ワシはこの強くてかわいいペットが大好きなんじゃー!!｣

マズイ!!

…と思った時にはもう遅かった。

華蓮の身体は、バカ皇子にコブラツイストを決めていた。

・―・―・―・―・―・

｢ほォ～、バカ皇子にコブラツイストねぇ～。

で、金は貸してもらえなかったってか。

ヘェ～～。

……お前ら全員腹切れ。｣

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