第43章


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 焼け跡を歩き続けている内に、先の方に炎を免れ焼け残った森の姿が段々と見えてきた。
もうすぐお別れですね、彼女はぽつりと呟く。俺はただ”ああ”と頷くしかできなかった。
 焼け跡と生い茂る木立の境目まで来て、彼女は木立へと一歩踏み込んでから急に立ち止まった。
<……本当にこのまま駆け落ちしちゃいましょうか?>
 こちらに背を向けたまま、本当に駆け落ちしましょうか、と彼女はそっと言った。
”えっ?”
 まさか彼女の口からそんな言葉が出てくるなんて、びっくりして耳を疑うように俺は聞き返した。
<えへへ、なんちゃって、ジョークですよ、ジョーク。スカーさん流の。引っ掛かりましたか?>
 すぐに彼女は振り返り、スカーの真似をした冗談だ、と取り繕うように笑った。
”なんだ、まったく……。あんなヤツの真似をしちゃいけない、バカが移ったら大変だぞ”
 はあ、と俺は複雑な嘆息を漏らした。
<ふふ、ごめんなさい>
 微笑んで謝る彼女の顔はどこか寂しげだった。


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