第43章


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 あからさまな挑発だ。乗れば確実に罠が待ち構えているのは分かりきっていた。
断腸が更に煮えくり返る思いで堪える俺達の傍らで、ブーバーンは抑え切れぬ程に激昂した。
それまで自分為にしか怒らなかったあいつが、誰かの為に怒り狂っていた。
 あいつは俺達の制止もまるで聞かず、炎は鋼に強いと言う相性の優位による驕りも相まって、
全身の炎を激しく滾らせながら、単身でキリキザンの下へと向かっていった。
そして、あいつは周囲に潜んで待ち構えていた岩ポケモン達が放った岩石の集中砲火を浴びて散った。

 このまま俺自身もいつまで無事でいられるか分からない。
彼女をちゃんと村に帰してやるという約束を果たすことは本当に出来るのだろうか。
そんな焦燥が募り始めていた時、ひょんな事に国境付近の哨戒なんて命令が舞い込んできた。
そう、彼女と初めて出会ったあの森の程近くだ。
 きっと、これが彼女を帰すことが出来る最後のチャンスだと思われた。
俺は前日に部隊のポケモン達に集まってもらい計画を打ち明けると、
彼女との別れを名残惜しそうにしつつも、皆快く協力に応じてくれた。

 次の日、出動前に俺は予めくすねておいた空のモンスターボールの中に彼女に入ってもらい、
他のポケモン達と協力して兵士達の目を盗んでトラックの荷台へと持ち込んだ。

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