第43章


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 ”目的”の捜索は一向に進展せず、その範囲はやがて岩窟の奥底や、鬱蒼とした深い森、
乾いた風が吹き渡る荒野にまで広がっていった。
凡そ人の足では容易に入り込めそうも無い過酷な秘境紛いの地を探り回らされ、
部隊の者達は自分達が探させられているものは本当に人間なのかと疑問視する声を上げ始めていた。
だが、そのぐらいの時期に新たに配属されてきた上官――スカー曰く、
『まるで蛇みてぇに冷たい目をした人間の女だ。俺が人間だったとしても、
幾らベッピンだろうとあんなのはやだね。キナくせー臭いがぷんぷんしやがる』
 人間として美麗な風貌ながら、この世のものならざる何かを潜めているような、
底知れぬ不気味さを感じさせた――は兵士達の疑念の声を黙殺し、
”目的”の正体を曖昧に暈かしたまま俺達に捜索を続けさせた。
 
 任務の過酷さは日に日に増し、犠牲もまた増えた。
 ブーバーンがやられた。敵の潜伏するという隠れ家に攻撃をしかけた時だ。
敵軍のキリキザン――全身が刃物のように鋭い、赤い人型の鋼ポケモンだ――が、
捕虜となっていた俺達の仲間をわざわざ窓際へと連れ出し、見せ付けるように痛め付けた。


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