第43章


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 部屋へと戻って件の”配当”を分け合って食べ終えると、俺は寝具を彼女に譲り、
自分は壁に寄りかかって眠りに付くことにした。彼女は申し訳なさそうにしていたが、
”硬い床で寝るのは慣れている。寧ろ落ち着くくらいだ”と俺は強がって、どうにか納得させた。

 翌朝、パタパタと何かが忙しなく室内を駆けずり回る音で俺は目覚めた。
〈おはようございます。すみません、起こしちゃって〉
 俺に気付き、にこやかに彼女は雑巾を手に挨拶した。一体、何のつもりだと尋ねると、
〈はい、何もしないでただボーっと身を置かせて貰うと言うのは申し訳ないので、宿舎のお掃除とか、
洗濯とか、私でも出来る範囲のことをお手伝いさせていただこうかと思いまして〉
 何もせずに身を置かせて貰うのは悪いから、せめてその間は掃除や洗濯等、
簡単な身の回りの世話をしたいと彼女は言い出した。

 俺は”君が連れてこられたのはこちらの手違いであって、気を使う必要は無い”と、止めた。
それに、もしも彼女が俺の目の届かない場所で何かあっては一大事だ。昨日は何事も無く済んだが、
彼女がまな板の上のコイキングが如く一匹で居るのを見たら、いつ奴らは手の平を返してもおかしくは無い。
大人しく部屋に篭っていてくれるのがこちらとしては一番助かった。

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