第43章


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「ふー……過度な馴れ合いはご免蒙りたいんだけどねえ。アタシの柄じゃあないよ」
「まあまあ、お嬢さん。今の俺達は一種の運命共同体だ。互いに腹積もりを幾らか明かし合って、
一定の信頼を得ておくのはきっと無駄にはならないはずさ」
 マフラー野郎はいつものどこか含みのある笑顔をニャルマーに向ける。
「やれやれ、ったく……火を囲んでジブンガタリなんざ、ガキのキャンプファイヤーじゃあるまいし……。
でも、まあ、いっか。少しくらい。このまま寝付けそうも無いし。だけど、聞いて後悔すんじゃあないよ」
 ニャルマーは渋々といった具合に口を開く。
「前にも言った通り、アタシの生まれはシンオウさ。もっと小さいガキの頃は、母親と二匹っきりで
どうにか生き繋いでいた。父親がどこの誰かなんてわかりゃあしない。良い母親とは言えなかったが、
種族的としてお世辞にも強いとは言えないアタシらニャルマーが、強かに悠々と生き延びる方法と手段を
色々と学ばせて貰ったよ」
「ってえと?」
 あっしはその悠々生き延びる方法とやらを、いずれ来るかもしれない一羽での野生暮らしの参考にさせて
貰おうと興味津々で尋ねる。
「真似しようって? 一つだけ特別に教えてやるが、アンタみたいな雄にゃあ無理さ。……いや、
雄でもやりようによっちゃあいけるのかもしれないが――クク、アンタのムサい面じゃあねえ」
「ど、どういう意味でぇ!」
 憤慨するあっしを、ニャルマーは鼻で笑う。
「強い雄、特に大きな群れのリーダーなんかを狙ってね、媚び取り入るのさ。その手段は――
うぶなボウヤじゃああるまいし、詳しく言わなくたって大体、分かるだろう?」
「あ……お、おう……」
 あっしは何となく意味を理解し、少し赤面して押し黙る。


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