第43章


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 マフラー野郎は首を横に振るう。
「いいや、俺も二人も誰一人嘘は吐いちゃいないよ。彼らに誓ってね」
「じゃあ今のオメエの状態はどう説明つけるってんだ? オメエの身のこなしは今だって
そこいらの奴よりもよっぽど軽快なくれえじゃねえか。はっきり言って、普通じゃねえよ」
「確かにね。俺が君の言う”普通”であったなら、俺は今もきっと二人が言っていたように
自力で歩くのが精一杯ぐらいにまでしか回復しなかっただろう。だから今の俺の状態は普通じゃない。
普通じゃいられなくなった、と言うべきか」
 そこまで言って、マフラー野郎は”ふう”と一呼吸置いた。
「なあ、ヤミカラス。君は所謂幻のポケモンの存在って信じてる?」
「ああん?」
 あまりに突拍子も無い質問に、くだらねえ冗談で話を逸らす気かとあっしは声を荒げて睨んだ。
だが、マフラー野郎は真剣な面持ちであっしの答えを待っているようだった。
「……んなもん、テレビのくっだらねえ胡散臭い特別番組とかでユーフォーだのユーレーだのと
一緒に並べ立てられて、本当にいるだのいねえだの人間共が面白おかしく騒ぎ立ててるホラ話だろ?
 信じてるわきゃねえだろ。そんな話、今は関係ねえだろうが」
 仕方なくあっしが答えると、マフラー野郎は再び一呼吸ついた。
「だろうなあ。だけど、それが関係大有りなんだよ。無理に信じろとは言わないし、言えないけれど。
俺はその幻のポケモンと呼ばれているものの一柱と相見えることになったのさ。後にね――」

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