第43章


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 ゾロアークが俺を襲った訳を知り、彼のことも彼女のことも責める気は起こらなかった。
ゾロアークの故郷を直接焼いたのは俺では無かったとしても、俺の今までの行いの中で
彼と同じぐらいに酷い境遇にあった者は沢山いるだろう。背中に受けた傷は当然の罰。
寧ろ軽すぎるくらいだとさえ思った。――そう、この程度では軽すぎた。
”……彼の言う通り、俺はすぐにここを出て行くべきだ。迷惑をかけたな”
 俺は立ち上がろうと体に力を込めようとした。
<――! ま、待って、まだ安静にしていなければダメ!>
 彼女が叫ぶと同時、体に力を込めた瞬間、背中から全身に向かって熱した有刺鉄線に
ぎりぎりと締め付けられるような激痛が走った。あまりの苦痛にに俺は声さえ上がらず、
ベッドへと転げた。じとじととした汗が全身から滲み出た。
 彼女は苦しむ俺の姿に耐え切れないように涙を滲ませ、躊躇う様に重々しく口を開いた。
<……怪我の、後遺症です。以前にお医者様でもなさっていたのかポケモンの身体にもお詳しい
牧師様のお話によれば、根気よく静養とリハビリを続ければ簡単な日常生活を送れる程度には
回復することはあるかもしれませんが、それ以上は難しいかもしれない、と……>
”な……に……?”
 怪我の後遺症により、例えリハビリをしても以前ほど動き回る事はできないかもしれない。
――もう戦えるような力は出せない。深い深い底の無い穴に落ちていくような感覚だった。
死ぬよりも残酷で無慈悲な言葉に思えた。戦うことしか能のなかった者が、
唯一の利点、存在している価値さえ失ってしまうかもしれなかったのだ。
<ごめんなさい……! でも、幸い、あなたが軍の者だと言う事は私とゾロアーク以外は知りません。
ゾロアークもあなたの事を言い触らして追い込むような卑劣なひとではない。
あなたの事は、あなたが部隊で私にしてくれたように、私が絶対に守り抜いて見せます>


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