第37章
[14]
背後からルカリオとハガネールが激しく争う音が響く中、
ヤミラミ二匹を両脇に抱え、チャーレムは光の石の地帯を駆け抜けた。
早くルカリオの援護に戻らなければ。チャーレムの気は逸る。
薄暗い坑道まで戻り、ここならばとりあえず安全だろうと判断し、チャーレムはヤミラミ達を降ろした。
「まったく。我等に任せておけばいいものを、余計な手出しをして事を荒立ておってからに」
ヤミラミの一匹を壁に寄り掛からせながら、煩わしげにチャーレムは呟いた。
朦朧としているのか、ヤミラミは力無く壁にもたれ、苦しそうに呻いている。
ふう、とチャーレムは仕方なさそうにため息をつく。
連なった鉄球のような尾を豪快に叩きつけられたのだ、相当な痛手を負ってしまったはず。
置いたらすぐにルカリオの助太刀に戻るつもりだったが、
ヤミラミの姿に情けを感じ、少し手当てをしてやろうとチャーレムはヤミラミの負傷個所を調べた。
しかし、いくら診てもヤミラミの体には、かすり傷一つありはしない。
確かに跳ね飛ばされていたはずなのに――不審に思うと同時に、背後からの殺気。
反応しきる前に、鈍い衝撃がチャーレムの後頭部に走った。
「ぐ、貴様――」
チャーレムは襲撃者に応戦しようとするも、ぐらりと頭が揺れ、そのまま崩れるように地に伏した。
壁にもたれていたヤミラミは顔を上げ、ちらりとチャーレムを見やった。
倒れたまま動かないことを確認すると、ひょいと軽く起き上がり、
襲撃者――もう一匹のヤミラミに駆け寄る。
「ギヒヒ、一時はどうなることかと思ったけど、何とかうまくいったね」
「ああ、兄弟。後はハガネールとルカリオが潰し合って疲弊しきるのをゆっくり待つだけだな」
にやりと笑いあい、ヤミラミ達はハイタッチした。
「待ちなさいッ!」
坑道に突如響き渡る声。
「誰だッ!?」
驚いてヤミラミ達が振り替えった先には、拳を構えるミミロップの姿があった。
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