第41章


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 考えてみりゃ、生きギャロップの目を抜くような戦場をしたたかに生き延びるのにゃ、
いかにも屈強で厳めしいポケモンなんかより、あいつの様な奴の方がよっぽど相応しいのかもしれねえ。
 まさか、あんな見た目は弱っちくて可愛らしげなチビが、あんな強力な電撃を使うたぁ思わねえからな。
 誰だって思わず小馬鹿にし、油断しやがる事だろう――あっしだって最初はそう思った。
 そうやって、あいつは相手の意表を突き、何匹……いや、何十、何百という敵を葬ってきたに違えねえ……
「どうやら、あのネズミ……かなりとんでもない奴のようだねえ……」
 ふとニャルマーも呟くが、この猫被り女だって相当なもんだ。
「てめえだって大概だろうが。あんなガキを誑かしてどうしようってんだ」
 どんな魂胆があるのか知らねえが、こいつの場合、相手がいたいけな子どもなだけにタチが悪ぃ。
 さっきの様子じゃ、あのコリンクってガキは、自分が騙されてる事にゃ全く気付いていねえだろう。
「うるさいね。アンタにゃ関係ないだろ……とにかく、アタシの目的にゃ、アイツが必要なんだ。
アイツだってアタシがいなきゃ、とっくの昔にくたばってただろうさ。まあ、お互い様ってヤツかねえ」
 そう奴はうそぶくが、いってぇ何がお互い様なんだか……
 あっしは思わず、こんな奴を守ろうと必死になってたあのガキに、いたく同情してえ気分になった。
 年の割にゃ芯の強え、まったく捻くれてなさそうな奴だけに、余計に気の毒ってもんだ――

――「後で知った事だが、あのアマ、てめえじゃせいぜい引っ掻くぐらいで大した攻撃はできねえが、
「ネコのて」とかいうやつを使うと、他人のどんな大技でも繰り出す事ができるらしいんでやす。
きっとあの哀れなコリンクも、そいつの為に利用されてたに違えねえ」
「そう言えば、連れのムクホークやフライゴンって、決して弱いポケモンじゃない筈なのに、
極端に内気だったり、自分に自信がなかったりで、折角の力や技が活かせてない感じの奴らみたいだよね」
「そうそう、それよ、そういう奴を狙って取り込むってぇのが、奴の狡賢いところなんでやんすよ。
同じ欺くんでも、あいつとは全然意味が違いまさあ」――

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