第41章


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「ん!? おお! 君達、足止めをするどころかやっつけちゃったか!」
 暴れるゲス犬の頭の上で余裕綽々、マフラー野郎は角から片手を離してあっしらに手を振る。
「な、なにやってんだよ!?」
「待っててくれ、こっちももうすぐ片付くッ!」
 マフラー野郎は離した手に拳を握り、振り下ろさんと構える。握った拳に、青白い閃光が一瞬走った。
「このネズミぃぃぃ……! いい加減、離、せ……!」
 随分体力を消耗させられた様子で息をぜえぜえ吐きながら、ヘルガーは唸り声を上げる。
より大きく身を揺さぶって振り落とそうと、四肢に力を込め直した刹那の隙――
「四足獣は走るのは速くても、こんな時は不便なものだな――!」
 マフラー野郎は不敵に笑み、バチバチと青白く唸る拳がヘルガーの眉間の上を捉えた。雷鳴のような轟音。
同時に全身を閃光が流れ伝い、ヘルガーは苦痛に開け広げた口からもうもうと煙を立ち昇らせながら前のめりに地に転げた。
 あっしとニャルマーは驚きに同じように口をぽかんとさせて、その光景を見つめていた。
「よし、ちょっと手こずったけどこっちも完了だよ。君達、やっぱりやれば出来るじゃないか。
俺より先に仕留めてしまうだなんて、凄いな」
 手をぱんぱんと払いながら、マフラー野郎はにこりと俺達に笑いかけた。
「い、いや、凄いのはアンタ、じゃないか……は、はは」
 ニャルマーは乾いた笑いを浮かべる。あっしは声すら出なかった。

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