第41章


[48]


「コリンク!」
「待った、一匹で飛び出すな!」
 脇目も振らずに後を追おうとするニャルマーを、マフラー野郎が止める。
「邪魔するんじゃないよ! アイツに死なれたら、今まで守ってきたアタシの苦労は――」
「あの子から見えなくなったら、急に口が荒くなったな、お嬢さん。だが、落ち着くんだ。必ず後で助けるチャンスは来る。
今は協力してこの状況をどうにか全員無事に切り抜けるのが先さ」
 あんな状況だってのに、目が点になりそうなほどにあっしは呆気にとられた。取り乱したニャルマーから発せられた声は、
コンテナの中でコリンクと共に震えていた姿とはまるで想像できねえ純粋な子どもとは程遠い、擦れっ枯らした声だった。
「さて……後はどうとでも替えのきく売れ残りと、手違いでこっちに紛れていたらしき欠陥品、それと、裏切り者だけだ。
処分してしまっても、問題ないだろう。やってしまえ」
 ヘルガーは亀裂のような邪悪な笑みを浮かべ、スリープとワンリキーに命じる。二匹は身構え、今にも向かってきそうだ。
「協力っつったって、何をどうするってんだよ!?」
 こんな状況で、あっしらが協力して立ち向かったところで、奴らに勝てるはずが無い。
あっしは、マフラー野郎に半ば掴みかかるように言った。
「相手は三匹。こちらも三匹。一斉にかかれば、どうにかなるさ。ピチューは数に入れられないけど、俺と君は戦える。
お嬢さん、コリンクを守ってきたのなら、あなたも少しはやれるよね?」
「フン、少しはね。だけど、あんまり過度な期待はしないでおくれよ。あのワンリキーみたいな奴は苦手だし」
「じゃあ、あっちのスリープって奴をしばらくでいい、気を逸らしていられるか?」
「そのくらいならやってやるさ。コリンクをまんまと奪ってくれたあのアホ面を思い切り引っ掻いてやりたいしね」
 まさか、この流れで、あっしにヘルガーの野郎を押し付けて逃げやがるんじゃないのか――嫌な予感がひしひしとしていた。
「うん、気合十分だ。ヤミカラス、君はあっちのワンリキーを頼んだ。格闘技を使う奴は、頭上からの攻撃が苦手らしいから、
君ならうまく攻められるだろう? 残ったあの青いヘルガーは、俺がやる」

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