第四章


[04]夫婦


会議を終えたあと、春麗様は塔の術を解き消し、二日後、春麗様は毘禅様の書斎に呼ばれた。

「呼んだかしら?」

「ああ、早速で申し訳ないんだが、月の存在には気付いているな…と言うより、いなくなった時点でお前は居場所を知っていた、そして連絡も取り合っていた。」

春麗様は突然の話に驚きを隠せなかったが、冷やかな笑みを浮かべた。

「…あなたは何でもお見通しね。
そうよ、連絡って言うよりいわゆるスパイかしら?」

「そうだな、しかも俺と出会う前からだ。
王紀を継いでからも時たま国を出ている事ぐらい耳に入っている。」

春麗様は笑い怖い事を口走った。

「あれだけ言うなと行ったのに…。」

「それだけ国王という地位は高いのだ。
例え王紀という地位があろうがな。」

「っで?私を牢屋にいれるつもり?」

「その前に答えて欲しい。」

「…何よ。」

毘禅様はとても怖い目つきで、まるで昔少年と闘った時の鋭い目つきを春麗様に向けた。

「何故、お前はまだここにいる?。」

春麗様はため息混じりに答える。

「…牢屋じゃなくて追い出そうとしているのね。」

「質問に答えろ。
幾度となく月の所へいっていたならいつでも城から抜け出せたはずだ。」

毘禅様は身内にも怒った事は今だかつてなかったその言葉に、春麗様は観念したように渋々答えはじめた。

「…ごめんなさい。
爽貴が生まれるまでは確かに出て行く計画をしていたわ…勿論月にも伝えて一緒にあの謎の城を作る計画までしていた…でも…出来なかったのは私も想定外だったわ…。」

春麗様が必死で涙を堪える姿を他所に毘禅様は痺れを切らし剣幕な表情で近づきさらに問い詰めた。

「それを何故だと聞いているのだ!
俺はあの城が出来た時、正直一瞬だけお前を疑った、何故なら月とお前は育ての親は同じだが月だけは血が繋がっていない、だからあの城を創れるのは慧(エン:春麗の旧姓)の血筋だけだからな!
恐らく月にその『禁術』を教えたのだろう?
あの時はかなりの屈辱だった!
…だが、俺は周りに黙ったままだった…。爽貴が生まれてから…お前は変わったからな…。」

そう言って少し落ち着くが眉間にはまだシワが寄っていた。


「爽貴が…生まれる少し前には手をきっていたわ…」
「…知っている、それから兵からのお前の情報は途絶えた。
もしか内通者がいるのではと思ったが…疑い切れなかった…」

「どうして?
別れようと思えばいくらでも理由はあったじゃない!!」

その言葉に毘禅様は額を春麗様の肩に置いた。

「あの頃の気持ち、国王である維持があった…5%、国民の為…5%、そして最後…」

春麗様の目には涙が伝い、何か決心をしたように目を閉じた。



「『君を愛していた』に97%…」

「う…ぷっくくっ…ひっく…。」

「お前は起用だなぁ?
泣きながら笑っているのか?」

「くくっ…だって、計算合ってないんだものっ!」

「5…5…97…たして…本当だ100%すぎてる…。」

「あははは…ひっく…はは」

「女って器用だなっはは。」

そういって、毘禅様は春麗様を抱き寄せたが真剣な声に春麗様は緊張した。

「でも…今は千%だ。」

「本当にごめんなさい…私は一万%愛しているわ。」

毘禅様は目を見開いてバッ離れた。

「何の、私は一億%愛しているぞ!」

「では私は一兆%よ。」

「…はぁ、もういい、そこに座れ。」

促したのはベッドだった。

「えっ?でも!」

「いいから。」

渋々座る春麗様、毘禅様もその隣に座り目線が合う。
段々と顔が近づくなか一杯になった春麗様がとっさに口を開いた。

「やや、やっぱりまだお昼だし…ッん?」

顔は近づいたが通り過ぎて膝に重みがかかった。

「膝…枕…。」

「俺、会議を終えてからまだ一睡もしていなかった。
二時間ほど寝させてくれ。」

春麗様はため息をついた時毘禅様は意地悪そうに笑った。

「っで?昼間だしって何?」

「っなっ何行ってるの?」

「くくっ、顔が真っ赤。
何ならもう一人産む?」

「冗談ならいわないで!」

「あはは、ごめん!!添い寝でも良いけど。」

「早く寝なさいよ!」

「いてくれるのか、本当落ち着くな、やっぱ俺にはお前しかいない。」

「?わ、私もよ…。」

「よし、おやすみ。」

「おやすみ」

「……ありがとう…。」

「えっ?」

あとは書斎に寝息だけが響いていた。


その後一緒に寝入ってしまって、二時間以上寝てしまっていた事は誰も知る由もなかった。

[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.