第三章


[03]神術


ー王室ー

「…彫雲、そろそろ目を覚まさないか!」

毘禅様と彫雲はずっと剣の鍔(つば)ぜり合いが続いていた。
互いに一歩引かず、まだ体力は余っているのかどちらも表情は平然としている。

孫家は代々力持ちばかりで、掌国が四国一兵力があるのは孫一族の力が有るからこそ成り立っているようなものである。
そのため、そこらの強い兵や他国の剣豪等が彫雲や関与とやり合った所で、鍔ぜり合いなど三分ももたないだろう。

そうなると彫雲が術を掛けられているにせよ、毘禅様が互角で防げるのはやはり一国を仕切る国王様だからこそである。

そのくらいの強いお方でしか国王にはなれないという事である。

五年前の事件が良い例なのでしょう。

さておき、目をギラギラとした彫雲は中々引き下がろうとはしなかった。

「毘禅様!」

三人が戻って来たのを確認された。

「璃燕、よかった。
何者かに術をかけられて戻ってきたようだ。
頼んだぞ。」

「はい!
毘禅様、私めが合図をしたら離れて下さい!」

「わかった!」

璃燕先生は両手を合わせ各指先だけを引っ付けた。
丁度両手の間が空間ができて三角を作った。

『我ハ璃燕、彼ノ悪シキ術ヲ炎ト化シ、保護シタマエ…。』

手の空間からは大きな炎が彫雲と毘禅様のまわりを囲い、更に炎から朱雀が現れ、口を大きく開け直ぐに二人を目掛け向かってきた。

「何時見ても璃燕の神術にはあっとうされる。」

「毘禅様!」

合図と共に毘禅様は彫雲を押した勢いで下がり、朱雀は彼の身体を透き通り天井へと消えて行った。
同時に透き通った身体中黒炎が燃え盛った。

「ぐああぁぁぁ。」

「あとはこの黒炎が消えるまで待つのみです。」

「すまない璃燕。」

これは平然とした表情で見ていたが爽貴様は初めて璃燕先生の強さを知り、唖然とされていた。

隣にいた彼が震えている爽貴様を見て肩を寄せた。

「…爽貴、大丈夫か?」

「えっ…あ、うん、大丈夫。」

爽貴様は初めて誰かが苦しんでいるのをみたのですから、恐いのは当たり前かもしれない。

毘禅様は二人のやり取りを一部始終見ていた。

「これよ、爽貴を連れて出ていなさい。」

「ッ!しかし毘禅様!
先程牢獄から出たばかりの者、何時逃げるかわかりかねません!」


「その男の言う通りだ。
えらく俺を信用しているのだな。」

「フッ、信用か…。
さてなぁ?
彫雲の件が終わり次第ゆっくり二人で話があるのだが。」

「お手柔らかにお願いします。」

早くと言わんばかりに肩を寄せ部屋を出た。

「ははは、最近の若い者はすることがちがうな。」

「毘禅様、そろそろ黒炎が弱まってきました。」

「よし、すまなかったな璃燕。
また宜しく頼む。」

「いえ、毘禅様のお力になれて何よりです。」

「そういって貰えると助かるよ。」

二人が話をしている間に黒炎は消え、何か黒い物が彫雲から離れていった。

「毘禅様!
お待ち下さい!
あの黒い物を追えば誰が彫雲に術をかけたかわかります。」

「本当か!?」

「はい!
もし良ければこの件、この璃燕めがお受けさせて頂きたいのですが…。」

「解った、璃燕に任せる。
好きにしてくれ。
失敗は無いと思うが全責任は私が負う。
健闘を祈る。」

「はっ!」

早速部屋に向かい、春麗様に続き璃燕先生までもが部屋に篭った。

毘禅様は絨毯の上で倒れた彫雲をソファーの上に運び、布団をかけた。

その後は椅子に座り、方肘を付き頭を抱え込んだ。

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