第一章
[03]王室
ー王室ー
毘禅は既に戦闘の準備は整っていた。
静まり返った部屋にドアをノックされる音だけが響いた。
コンコンコンコン…
「入れ。」
ドアが開くと同時に剣を抜いた。
毘禅が見た者は全身血まみれでフードを被った幼い少年だった。
「ほう、既に剣を抜いているのには驚いた。
よく俺が入ってきたのがわかったね。」
「私も驚いたよ。こんな小さな少年が一人、小一時間でここまでたどり着いたとは。でも、『礼儀』は知らないようだね。」
「レイギ?」
「ノックの回数には。
二回の自分より権力が弱い者に対する回数。
三回の尊敬、信頼、自分より権力が強い者に対する回数。
四回の敵意、見下す者に対する回数といってきちんと意味があるのだよ。」
「そうか。
生まれてからは四回と教えられてきたからわからなかったよ。爽貴は何もいわなかったけどな。」
「爽貴と会ったのか…。」
少年はクスッと笑って答えた。
「会ったと言うか部屋に入った。
噂通りの美人だな。
突然友達になってくれって言われたのにはビックリしたが、あんたを倒したら迎えに行くと約束した。」
「ハハハッ!
まさか爽貴が敵になぁ。」
「だがお前を殺すと言う命を受けている身。
それを背けば俺にかけられている術で消されてしまう。
お前に負けても死刑なのだ。
ならばお前を倒して爽貴と共にここをでれば問題ない。」
毘禅はその言葉に眼の色を変えた。
「まだ考えは子供なのだな。
それは頼もしい限りだ。
だが私は司蓉より何倍も強い。君事きに負けるつもりは微塵もない。」
少年は答えるように、鋭い眼に変わった。
「フン。
しゃべりが過ぎたな。」
少年と毘禅の戦いが始まった。
始めは紙一重だったが、あっさりと少年の剣は払われ剣先を向けられた。
少年はフッと笑いしゃがみ込んだ。
毘禅は真剣に話しをした。
「お前はまだ幼い。
そういう生き方しか出来ないのか?」
少年は真っ直ぐ毘禅を見つめた。
「ここで生かされてもかけられている術がある限り俺は殺される。
きっと貴方を倒したとしても術は作動する。」
「…誰がかけたのだ?」
「それは禁句。
術を作動させる合言葉になる。」
「では国は何処だ?」
少年は淡々とした表情で答えた。
「それも禁句だ。
術は何層にも重ねてかけられている。
恐らく国、産みの親、俺に剣術・技を教えた人物は言わせないようにかけているはずだ。」
「…君がもし捕まった時、仕掛けた人物も割られるからか…。
君はもう生きるのを辞めるのか?」
「…あぁ、かけられている術は古代使われている術で近代の術で解くには困難だ。」
「…死ぬならば私に一度命を預けてみないかな?」
少年は眉間にシワを寄せた。
「話しを聞いていたのか?」
毘禅は少年の言葉を掻き消すような大きな声を出した。
「預けるのか預けないのか!」
少年はビクッとしたが少し考え、やはり冷静に答えた。
「フン…好きにしてくれ。」
その言葉に毘禅は力の入っていた肩を落とし、子供をあやすかの様な笑顔をみせた。
「では私に着いて来なさい。」
少年は渋々そのまま手を引かれ部屋を出た。
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