第一章


[02]王宮


ー中館四階奥・王室ー

掌国国王・毘禅(ビゼン)は緋色の椅子に座り書類の整理をしていた。

急に王室の大きな扉を叩かれた。

コンコンコン

「関与(カンヨ)です!」

「入れ。」

「失礼します。」

入って来たのは国王の娘の付き人だった。
「何やら外が騒がしいな。」

「はい!その事で参りました。

正門の門番兵十人が七ツの子供にやられ、既に中央広場まで接近中で、王宮に向かっているとの情報がありました。

毘禅様の付き人・司蓉(シヨウ)が王宮一階にて待機されています。」

国王は窓の外を眺めた。

「一階は司蓉に任せ、残りの兵で南館一階・北館一階と民の保護をせよ。

七ツの子供に司蓉がやられる事はないとは思うが、念のため私も戦闘の用意をしましょう。」

「はっ!」

ー王宮中館一階・玄関前ー

「司蓉殿…。」

心配そうに一人の兵が近づいてきた。

「はははッ!そう心配そうな顔をしなさんな。

相手は餓鬼、俺はこの国一の豪なのだよ。

この国は四国一の軍事国だ。その掌国で一番なら四国一の剣豪と言えよう!
それがたかが七年の人生しか歩んでおらん童に負けようものか。」

その言葉に周りの兵はどこか安心しきった気持ちがあった。

「そうか。まぁ俺はこの小一時間で兵を倒しながらここにたどり着いたけどね。
それはお前達に出来るのか?。」

少年は既に王宮内へ侵入していた。

「……ッ!」

司蓉殿に続き周りの全兵が剣を向けた。

少年はナメるかのような眼で辺りを見回した。

「あんたが司蓉ってゆうんだ。そんなでかい剣で俺のスピードについてけるの?
俺的に百パーセントの確率で無理だと思うよ。」

そう言ってくすっと笑った。

ー娘・爽貴の部屋ー

爽貴(当時六歳)は戦闘の用意をしていた。
爽貴は四国中『掌国うつけの姫』でとても有名である。

勉強は嫌いで授業はきちんと受けているが何故か頭が悪いときた施しようのない馬鹿である。

「関与、男の子が入って来たらお友達にはなってもらえないかな?」

その言葉に呆れた付き人の関与は答えた。
「…爽貴さま、歳が近いとて国を乗っ取ろうとしている輩、奴は容赦なく掛かってくるでしょう。
習っている剣術を本番で生かすのみです。」
「でも一階には関与の叔父さんの司蓉さんがいてるんだから大丈夫よ!」

関与は嬉しくてクスッと笑い爽貴の頭を撫でた。

「ったく、信用しすぎるんじゃねぇぞ!」

その時だった、血相変えた兵が突然入ってきた。

「関与殿大変です!」

「入るときはいかなる時もノックをしろといっているはずだ。」

「申し訳ありません!只今、侵入者が王宮玄関前突破…うわあああ!」

室内の関与と爽貴は突然の兵の叫び声に驚き、何が起こったのかわからなかった。

「どうした!?」

兵が横に倒れるとフードを被った一人の少年が血まみれの剣を片手に立っていた。

剣先からはぽたぽたと血が床へと浸っていた。

「……ッ!フードを被った赤い眼…。
何故だ!一階には叔父貴がいたはず…。」

関与は一瞬目を疑った。

それもそうだろう、関与は掌国最年少で王宮に仕えている身。

仕えている爽貴と同い年の少年に司蓉がやられるとは到底思えなかったからだ。

それは国中、いや四国中の民がそう思うだろうが現実そう甘くなかった。

流石の爽貴でも場の雰囲気は伝わってきた。

服の上下は既に血みどろ、もう何人も倒してきたと思われる格好である。

授業ではこう言った話はよく聞くが、実際に見てしまうとやはり怖いものだ。

爽貴は震えながらも話してみた。

「あの、私とお友達になれないの?」

少年は目を丸くした。

「馬鹿と噂には聞いていたがまさかこの状況で…。
でも中々の美人だな、良いだろう、友達ってやつになってやる。」

爽貴は喜んだが、関与は驚いた。

「ちょっとまて!そういって爽貴を人質にしようという考えなのだろう?」

顔色を変えた少年は答えた。

「俺は生まれてこの方裏切り行為は全くした事がない。
決めたことは必ず突き通す主義なのでな。でも困ったなぁ、爽貴の親父さんを殺すという命を受けている身、この命に背けば、或は裏切れば俺はかけられている術によって消されてしまうからなぁ。
かといって捕まれば死刑、どっちにしろ消される運命なんだ。

ここにいてもしょうがないんで、そろそろ王室に向かう事にするよ。」

そう言って一瞬のうちにいなくなったが、爽貴の横を通った時ボソッと呟かれた。

『生きていたらこの部屋に迎えにくるよ。』
その後少年は王室へと向かった。

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