第二章


[01]情報


『掌国に顔を隠した殺人鬼現れる。

これ、身体は小さく、掌国の門番兵は追いかけるが全兵すべてを突破。

向かうは王宮、前後には兵の大群。

これ、剣を振るい全身血を浴び、それでもなお突き進む。

ついに宮前、これ、息乱す事なく宮中へ。

直ぐは国王の右腕なる者現る。
右腕は予想外に敗るる。

そして、五代目国王のいる王室まで一人で突破されたのは掌国歴史上初、前代未聞の惨事。

国王、これを見ても眉一つ動じず、これは迷わず国王に剣をかざす。

国王対等に剣をかざす。

これは敗れ、三日後死刑台にて姿を明かす。

銀の髪に赤い眼、そして何より六歳の男の子供なり。

子供のこれ、何も言わず死刑となる。

こうして再び掌国に平和が戻る。

掌国五代目国王王宮伝・第一章』

「先生、読み終りました。」

「はい、今日はここまで。
三日でやっと一章を読めるようになられて、爽貴様は本当に賢くいらっしゃいますね。」

眼鏡をかけた魔女のような顔立ちの先生が、嫌味を言ってきた。

他の教科の先生もやはり同じ態度をとってくる。
いつもの事だった。

「一時間後には『四国会談』がありますので支度してらして下さい。」

「はい」

先生は教卓に揃えたノートと教科書を持ちそのまま出ていった。

爽貴がやっと終ったと言わんばかりの深いため息をついた。

丁度その時、関与が顔を出した。

「爽貴様急いで下さい!
会談まであと1時間しかないですよ!」

「…わかった。」

「…どうかなさいましたか?」

「さっきの授業で五年前のお話が出て来たわ。」

「…歴史の授業でしたからね。」
「関与達は私に何か隠してるわね?
あの牢獄に近寄らせない様にしているのは知ってるわ!」

「すいません。
毘禅様の命は絶対でございます。

さ、会談に間に合いませんよ!急ぎましょう。」

渋々と立ち上がり自分の部屋へと向かった。

会談での支度が整い大会議室に向かう途中、二人の兵がセカセカと走って行った。

少し前には一人の兵が立っていたが声をかけようとしたとき、関与殿が部屋から出てきた。
今は声を出すのに精一杯かと…。」

「まだ叫んでいるのか?」

「はい、微かに『会わせろ』と…。」

兵はとても辛そうに話をしていた。
今にも泣きそうな震えた声だった。

「関与様、兵長をさせて頂いている分際で言うのも何ですが、その…そろそろかと。
私だけではありません、牢獄の見張り兵共々は五年間欠かさず叫びを聞き続けてきました。
今でも血を吐いてからもなお爽貴様を待っています。
心が痛くなる一方で…。
夜中は流石に他の死刑囚達がいてるので宥めに行ったりという感じでしたが、そろそろ限界かと…。」

関与殿はため息をついた。

「牢獄の話はちらほら噂には聞いていた。
俺もそろそろかとは思ってるんだが、これに関しては毘禅様が圧力をかけているので流石の俺でも…。
とりあえず医者を呼び診断したうえで毘禅様に報告。」

「わかりました。」

話の一部始終を見ていた爽貴様は五年前の彼に違いないと察した。

「…もしかして生きてた?」

そのまま会議室とは違う方向へ走って行った。


[次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.