第一章


[01]テロ


この世は掌国(しょうこく)・鄭国(ていこく)・呂国(ろこく)・仁国(じんこく)の四国(しこく)が存在した。

その中で軍事力・富・政権に関して掌国に勝る国はなかった。

高い防壁に囲まれたこの国に入国するにはただ一つ、正門を潜らねばならない。

そんなに広い国ではないが、住み心地がいいとの事で外人もちらほらとみられる。

ー掌国 正門ー

正門には十の兵が門番されている。

「ほんと最近平和だよなぁ」

もうひとりの兵が答えた。

「これだけ頑丈で高い防壁で掌国をぐるりと囲っているからな、壁を越えて来る奴なんていないよ。」

二人の兵はブラブラと散歩するかのように歩み始めた。

その時何かが空から降ってきて、二人の背後にふわっと着地し、二人の耳元で囁いた。

「じゃあ壁を越えて侵入した俺は意外性ナンバー1か?」

兵は一瞬背筋が凍ったが、空かさず剣を抜き振り返った。

二人が目にしたのは赤い目にフードを被った全く幼い少年だった。

「だ…誰だ!!まだ幼いようだが。」

その声に残り八の兵が剣を抜きやってきた。

少年は冷静に答えた。

「誰って聞かれて明かす奴がいるわけがない。平和ボケにも程があるなぁ。」

「己!言わせておけばぁ!」

その言葉にカチンときた兵の一人が剣をかざそうとするが、少年は顔色少しも変える事なく剣を振りかぶった兵に接近してきた。

途端、剣を奪い突き付けた。

突き付けられた兵は腰を抜かし地面にお尻を着け、それまでのスピードが早すぎて、残る八人の門番兵も怖じけづいた。

少年は溜息を着いて話かける。

「おい。」

声をかけられた兵は驚いた様子で答えた。
「はいッ!」

すると少年は到底子供には真似のできない殺気を放ち鋭い目で兵を睨み付けた。

「王宮は何処だ?」

全門番兵は、一時は黙った。

少年が怖かったと言うのもあったが、掌国では断固としてむやみに王宮の場所を教えてはならないと言われている。

剣を突き付けられている兵は冷や汗をかきつつ、場所を教えては国を裏切る事になると考えていた。

ましてやこれだけの強さで王宮に向かうとしたらテロリストとしか思えない。

この状況下で言うか言いまいかと葛藤をしていたが、最善の考慮の末、更に汗をかき口を開いた
「そ…それだけは答えら…ッ!」

兵が言い終える前に少年は冷たい笑みを浮かべ容赦なく切りつけた。

「よくできました。」

少年は無表情なまま残りの兵に目線を変えた。

「次は誰が答えてくれるんだ?答えたら逃してやる。」

兵は命乞いをし、遂に明かしてしまった。
少年は初めて不器用だが笑みを浮かべ、何も言わず兵達を背に歩き始めた。

残り兵は行かせまいと、少年の後ろから襲おうとしたが、後頭部に目があるかのように攻撃を交わしては門番兵全てを切り落とした。

少年は奪った剣を片手に真っ直ぐ王宮へと走り去った。

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