第41章


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 思わぬ反応のよさにあっしの大人げなさにも拍車がかかり、ますます脅かしに熱がこもった。
「一度目をつけた獲物には奴らはとことんしつこいって聞くぜぇ? おや、あの木の陰で今何か、
動いたような気がしたぞ……クカカ」
 びくりとして子ニューラは顔を青ざめ、ますます縮こまる。
「さあ、分かったらわがまま言ってねえで、さっさと案――あたッ」
 後一押しというところで、ぽかり、と頭に軽い衝撃を受ける。振り向くと、呆れた様子でマフラー野郎が拳を握っていた。
「そこまで。子どもにあまりいじわるするんじゃない」
「な、何しやがんだ。折角、もう少しで余計な手間が省けそうだってのによ。ガキだからって甘やかしすぎだぜ」
 子ニューラに聞こえないよう声を潜めてあっしは言った。
「脅迫して無理矢理嫌々案内させたって意味が無いだろう。ちゃんと信頼してもらわなきゃ。
君は、大事な子どもがいなくなって気が立っているであろうニューラ達を敵に回したいのかい?
 コリンクだって無事に返してもらわないといけないっていうのに」
 ひそひそとマフラー野郎は答える。
「まず子どもから誑かして外堀を埋めにかかるってか」
「……言い方は悪いが、そういうことさ。それに、束の間の自由な冒険に少しぐらい付き合ってあげるのも一興じゃないか。
程度と質の違いはあれ、自分の意思じゃなく一所に押しとどめられている辛さは、君もよく知っているだろう?」
 にっとマフラー野郎は微笑んだ。それを言われると、あっしも少々弱い。
「チッ、勝手にしやがれ」

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