第41章


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 子ニューラはしばらくの間思案しながらマフラー野郎の顔を推し量るようにちらちら見た後、
急に何か思い立ったような表情を浮かべた。
「そーだ! オレのお願い聞いてくれたら、案内してやってもいーぞ」
「お願い?」
 急な申し出に、マフラー野郎は首を傾げる。
「うん! 里に行く前に、ちょっと連れて行ってほしいところがあるんだ。エンジュシティってところなんだけどさ」
「ヤミカラス、知ってるかい?」
 すかさずマフラー野郎はあっしに振る。
「ああ、このジョウト地方の北側にある、古びた雰囲気のでけえ町だよ。そこに一体何の用があるってんだ?」
「今の時期、エンジュに行くと、すげーキレーなコーヨーってのが見れるって親父達が言ってたんだ。
知ってるか、コーヨー。フツー、木の葉っぱって緑なのに、まるで燃えてるみたいに真っ赤に染まるんだって、
自然の力ってすげー! オレ、それが見てみたくってなー」
 子ニューラは目を輝かせて、うきうきと語る。
「あのなあ、俺様達は呑気な観光旅行してるわけじゃねえんだよ。別にそんなもん今じゃなくても、
後で勝手に好きなだけ自分で見に行くなりすりゃいいだろうが」
「今じゃなきゃダメなんだよー! オレ、大事なアトのトリが何とかで、全然里の外には遊びに行かせてもらえないし……。
上手くこっそり抜け出しても、すぐにバレて連れ戻されちゃって、こんなに遠くまで来れるチャンスは滅多にねーもん。
だから、なー、頼むよネズミー」

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