第39章


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 じりじり詰め寄る巨影。俺は撫で下ろしかけていた肩を強張らせ、冷や汗と共に顔を上げた。
見透かすように向けられた鋭く輝く目に、堪らずひくひくと口端が引き攣る。
あわよくばこのままお目溢しにあずかれるやもと頭の片隅で目論んでいたが、やはり生死の道理を捻じ曲げるなど、とても見逃しがたい禁忌なのだろう。
あれだけ堂々と復活を見せ付けておいて、今更隠すことも出来まい。
「う、むむ……だが、俺があんな目にあったのも、お前とギラティナの不手際に巻き込まれたのが原因ではないか。それにもしも俺が蘇らなければお前達も危うかったのだろう。感謝されてもよいくらいだ」
 精一杯に胸を張って言い放つが、我ながら何とも苦しい言い逃れだ。

「ごもっとも」
 たった一言と共に、あっさりとパルキアは引き下がった。呆気にとられる俺を見て、パルキアは口元に大きく弧を描く。
「からかってみただけです。生と死のことなど元から私の管轄外ですし、つい先程に厳密に管理しようとする者もいなくなったばかりではありませんか。誰があなたを罰することが出来ましょうか、ねえ?」
 当て付けるようにパルキアは横目でギラティナを見やる。
「……勝手にしろと既に言った筈だ」
 苦虫を噛み潰したようにギラティナはわなわなと顎を震わせたが、すぐに諦めて吐き捨てるように言った。

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