第39章


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「ええ、あなたにも存分に思い知らせてさしあげましょう。して、宝玉はどこに?」
「今に返す」
 ディアルガは四足を地にしっかりと突き立て、体の奥底まで染み渡らせるように深々と息を吸い込んだ。
胸部を守る分厚い銀色の装甲の中心に埋まる青白い結晶が灯り、全身に走る半透明な溝を伝って光が血液のように行き渡っていく。ディアルガに集る力の大きさに、俺は周りの空気ごと見えない大きな渦に掻き回されて磨り潰されるような強い圧迫感を受けた。
 パルキアは直ぐに俺を引っ込めて手の内に戻し、ディアルガとの間に線を引くように爪先を走らせる。
すると、急に不思議と重圧は消え去り、目の前のディアルガの姿も、間に何も無いはずなのにガラスか何かを隔てて見ているように感じられた。
 光が体の隅々にまで達するとディアルガは背の扇状のヒレを雄々しく広げ、大口を開ける。
その瞬間、全てが捻れた。凝縮された力が捌け口を見つけて一斉に飛び出し、音も、光も、俺とパルキアとディアルガ以外のものは全て左回りに揉みくちゃにされて、捻じ曲がっていってるように感じた。
捻れの中で、周りを覆っていた年老いた木々はどんどん縮こまり、砕けて転がっていた石片達は独りでに集って組み上がっていく。
 捻れが静まるとと、古木の海に沈み朽ち果てた遺跡は、豊かな若々しい森を見渡せる小高い塔の頂上と化していた。
ディアルガはやれやれと座り込み、無言で奥の台座を尻尾で示した。不可思議な装飾の施された台座には、乳白色に輝く巨大な真珠のような球体が嵌め込まれている。
「感謝します」
 礼を言うパルキアに、ディアルガは大きな欠伸を返事代わりに一つして、体と首を丸めて眠り始めた。
「まったく……。では、改めて参りましょうか、ピカチュウ。四の五の言いながらも、ディアルガもあなたに少し期待しているに違いありませんわ」
 当てつけるようにパルキアが言うと、ディアルガは寝息を立てながらどこか不機嫌そうにびたんと尻尾で床を叩く。
「ふふ、安心して眠っていてくださいまし」


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