第43章


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 一介の者達以下の兵器の一つでしかなかった俺達はそんな事は露知らず、
占領した地区の治安維持の傍ら、うわべの名目である世界平和の敵たる武装組織の首謀者だったか、
強力兵器の開発者だったかの狩り出しを命じられていた。
『楽しい楽しい延長戦、エクストラゲームの始まりだ。死神の奴はまだまだクズ共を食い足らなくて、
デザートまで要求してるらしいや。嬉しいねえ、クソッタレが』
 そんな風にスカーは毒づいて、どこか乾いた笑いを浮かべていた。

 治安維持と捜索にあたる中、自軍は幾度と無く敵の攻撃にさらされた。それは大規模なものではなく、
少数による待ち伏せや、民間人に偽装した者達による奇襲と、捨て身に近い特攻だ。
如何に手練であろうと虚を突く攻撃は中々に凌ぎ難く、加えて優勢に浮かれた者達の足はいとも容易く掬われた。
 しぶとく図々しくドブに巣食うコラッタの如く今まで生き抜いてきた俺達の部隊からも、
ぽつぽつと犠牲となる者が出だした。まるでふるいにでもかけられるみたいに徐々に徐々に。
殺しても死にそうにないと思っていた奴等が本当にあっけなく、容赦なく。

 犠牲が出る度、あの子はもう空き部屋となった宿舎の一室で、何時間もずっと寝食を忘れて祈っていた。
俺も祈りこそしなかったが、胸の片隅に極々微かな虚脱感のようなものを抱きながら、
ぼうっと彼女の後姿を見守っていた。

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