第43章


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 その後、宿舎で過ごしている間、彼女は暇さえあれば宿舎を掃除し、汚れ物を洗濯し、食事の配膳を手伝い等々、
甲斐甲斐しく働いて回った。懸念していた他のポケモン達の動向も、自分達に怯えて媚びているわけではなく、
ただただ誰かの為を想って尽くす彼女の姿を見ていて、悪さをする気など陽の光に当てられたカビのように
しょげてしまうのか、誰も手出ししようとはしなかった。それどころか逆に彼女を手伝おうとするものまで
チラホラと現れる始末だった。細かいことが大嫌いなブーバーンが細々とした窓の隅々までの清掃や、
干した洗濯物の取り込みを紳士的な態度のまま手伝い、腹さえ減れば椅子さえ食らうマルノームが、
小休止している彼女にたったの一つとはいえ、なけなしのオボンの実を分けようとしたのは誰もが目を疑った。
 人間達も彼女の存在に気付き、最初は一体誰が何のために、いつの間に連れ込んでいたのかと怪しんでいたが、
――俺の持ち主はずっと口笛交じりに素知らぬ顔を貫き通していた――特に害はなさそうだし、
寧ろおかげで宿舎の衛生状態とポケモン達の態度が良くなっている様だと、彼女がちょろちょろしていても
気にしないようになっていた。

 俺も彼女を見守りながら手伝わされている内に、嫌でも他のポケモン達と関わる機会が増え、
時に悪態を交わし合い、殴り合い、半ば殺し合い、それを彼女に窘められて渋々協力し合い、
を繰り返している内に、何だかぎこちないながらも奴らと慣れ親しまされていった。


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