第43章


[54]


「当時は最新鋭だったスーパーボール……。軍属のトレーナーの中にはこういう最新の玩具を
贅沢に使って遊べることを命を賭けるに値する対価の一つとしている輩も少なからずいた。
あの時は結構な高級品だったらしいけど、今もかな?」
「普通のモンスターボールに比べりゃ少しは割高だが、今となってはその辺のガキでもちょっと小遣いを
貯めりゃ余裕綽々買える程度だ。それどころかもっと性能が上のハイパーボールなんてのも流通し始めてやがる」
「へえ、スーパーだって中々抜け出しにくいってのに、『かがくのちからってすげー』ってところか。
人間の進歩は恐ろしいものがあるな。その内、どんなに大きくて強力な奴でも弱らせる必要さえなく、
投げるだけで簡単確実に捕まえてしまうものや、既に親登録してあるポケモンまで無理矢理IDを書き換えて
スナッチ――強奪してしまうものまで開発されたりして」
「へっ、風の噂じゃあ、前者は既にどっかの大企業が開発を始めているって話だぜ? 後者だってあくどい
人間どもが如何にも思いつきそうなことだ。その内、どっかの悪の組織が秘密裏に実用化まで漕ぎつけたりしてな」
「うへえ、くわばらくわばら……。っと、話が脱線してしまったな――。
 これからこの捕まった奴らは、過酷な調教や訓練の果てに兵器と変えられてしまうのか、もしくは研究所送りに
されて愛護団体が内容を聞いたら泡を吹いてひっくり返ってしまいそうな実験の材料とされてしまうのか、
はたまた日頃の戦いで心身ともに飢えた軍用ポケモン達への生餌や玩具にされてしまうのか――」
「話を聞いているとよ、何だか軍隊ってのもロケット団と大差ねえんじゃねえかって思えてくるぜ」
 眉間を顰めてあっしは言う。

[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.