第43章


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 細めた目の間から覗く射抜くような輝きに、俺は心臓がびくりと跳ね上がる思いがした。
『うん、ボクは君の過去と正体を知っているんだよ、黄色い悪魔さん』
 そう続けて、ミュウは口元を微かに弧に歪めた。まるで小さな虫を執拗に指の先で小突き
転げさせて遊んでいるかのような黒い笑みだった。
”それは、もしかしてゾロアークの告げ口か……?”
 額にじわりと嫌な汗が滲み、俺はゆっくりと後ずさりしながら言った。
『ノンノン、彼は良くも悪くも純粋だもん、そんなことしないよ。もちろん、あの子もね。
ボクは以前に何度か君の姿は見たことがあるの。君の方は気付いて無かったみたいだけれど。
ある時は暗い暗い洞窟の奥底の岩陰から、またある時は木々が所狭し生い茂るじめじめした
ジャングルの葉と葉の隙間から、時にはがさがさ荒野にびゅうびゅう吹き荒れる砂嵐の合間から。
ううーん、あんなポケモンだって普通の子だったら住みたがらない様な荒れた土地を君は、
黒猫さんに、鳥さんに、怪獣さん、色んなお友達と一緒に随分苦労して歩き回されていたね。
……その様子、ボクが何を言いたいかって大体ピンときたかな?
 そうさ、君達の飼い主のそのまた飼い主達が血眼になって追い求めさせているのは、
このボクなんだよ。表向きにはどういう風に伝えられていたのか分からないけれど』

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