第43章


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 じっと観察していても、”それ”の容姿と言動は無邪気な子どもそのものだった。
でも、明らかに普通の子どもとは違う。そんな気配を俺はひしひしと感じ取っていた。
読み聞かせを通じて教会の子ども達と近くで接してきたからこそ分かる、
”それ”が瞳に宿している光の異様さだ。ズルッグもチラーミィもダルマッカも他の子もみんな、
近くで覗き込むとその瞳はまだまだ知らないこと一杯、知りたいこと沢山で、
なりたての木の実みたいな新鮮で澄んだ輝きだった。
だけれど、”それ”の瞳は濁ってこそいない、それどころかうんと澄み渡ってはいるが、
その輝きは長い年月をかけて磨き抜いた水晶玉みたいにあまりに無機質な透明さで、
近くを見ているのにどこか遠くまで見透かしているかのような、とても達観したものに感じられた。
『さてと、まずは何から話そっかなー?』
 ご機嫌に足をパタパタさせながら、”それ”は首を傾げて俺に問い掛けてきた。
”では、まず一つ教えてもらいたいんだけれど。君は、いや、あなたは一体何者だ?
 メタモン以上の変身能力、そして、感じる気配。明らかに只者じゃあない”
 おずおずと俺は”それ”に尋ねた。
『おおっと、確かにまだ言ってなかったけ、ごめんごめん。そう、何を隠そうこのボクこそが!
 この世に初めに産み落とされた始祖の者。ありとあらゆるポケモン達の遺伝子、情報をその身に宿し、
全てのポケモンの先祖と語り伝えられてきた幻の存在――その名もズバリ、ミュウちゃんさ!』



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