第43章


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 まさか先回り出来る隠し通路でもあったのか? いや、彼女はそんな意味の無いイタズラを
するような性格じゃあない。彼女は双子の姉妹だったのか? でも、それならこんな地下に
片方だけが逃げ隠れていなければならない理由が無い。わけが分からなくて、
俺の頭と目はぐるぐるとパッチールみたいに回っていたことだろう。
 そんな俺の姿を見て彼女らしきものは堪えきれなそうに笑い声を吹き出し、
けらけらと腹を抱えてあどけなく笑い出す。らしくない姿に俺は驚いて目を見張った。
『すっかり騙されてる! ま、ボクにかかれば当然だけれど、フフフン』
 彼女らしきものはまるで無邪気な子どもみたいな声色で得意げに言った。
『あー、楽しかった。ではでは、せーので、どろん!』
 彼女らしきものは掛け声と共に飛び上がり、くるりと宙返りした。
途端に彼女らしきものの全身は柔らかい光に覆われ、ぐにゃぐにゃと宙でその輪郭を変えていく。
光が収まると”それ”はそのまま地面に着地することなく、小柄で猫に少し似た姿形の
薄桃色の体を翼も無いのにふわりとその場で浮き上らせ、呆然と固まる俺を青い瞳で見下ろした。
『やあやあ、わざわざこんな所まで来てもらってごめんよ。最近やけにあの子から……
ああ、あの子ってシスターちゃんのことね。からよく君の話を聞くようになってね。
ボクとしても君に直接会ってお話してみたいなーって思って呼んだの!』

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